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<社説>岸田首相会見 改憲より暮らし支援を

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 岸田文雄首相は参院選を受けた記者会見で、銃撃されて死亡した安倍晋三元首相に触れ「思いを受け継ぎ、拉致問題や憲法改正などの難題に取り組む」と述べた。

 選挙戦で改憲にほとんど言及しなかった首相が、手のひらを返したように改憲に前のめりの姿勢を強調し始めた。

 唐突で不自然な印象は否めない。改憲を宿願とした安倍氏を政治的に利用し、政権の求心力を高めようとする思惑が透ける。

 改憲勢力が改憲の国会発議に必要な総議員の3分の2を上回ったとはいえ、改憲への国民の賛否は依然割れている。

 首相は新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻、物価高騰を挙げ「戦後最大級の難局にある」とも述べた。国民の大多数が望んでいるのも、生活を脅かす感染症や物価高への対応だろう。

 改憲を声高に訴えるより、暮らしの不安を取り除く政策に全力を挙げるのが政権の使命である。

 参院選で自民党は単独で改選過半数を獲得して大勝した。昨年の衆院選に続く連勝で、首相は参院でも安定的な基盤を得た形だ。

 衆院を解散しない限り、大型の国政選挙がなく、腰を据えて政権を運営できる「黄金の3年」を手にしたとも言われる。

 だが、おごりは禁物だ。国民の多様な声をくみ取る丁寧な姿勢が求められる。

 1人区の沖縄では米軍普天間飛行場の辺野古移設推進を掲げた自民党候補が野党推薦候補に敗れた。移設にあらためてノーを突き付けた県民の思いを、首相は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 首相は昨年10月の就任以来、失点を避ける安全運転に徹し、課題を先送りするケースが目立つ。

 きのうの会見でも、政府の物価高対策が評価されていないと問われると「不満を受け止める」としながら、決定済みの予備費の活用を強調するにとどまった。

 看板政策の「新しい資本主義」は成長優先が鮮明になり、肝心の分配政策は後退した感が強い。

 課税強化で得た財源を国民に再配分する政策や、持続的な賃上げを促す政策が欠かせない。

 それには安倍氏が主導し、格差を広げたとされるアベノミクスの検証と路線転換が求められる。

 森友・加計問題や桜を見る会の疑惑など「負の遺産」の真相究明も忘れてはなるまい。

 「安倍氏の遺志」を振りかざして、政策の優先順位を間違ってはならない。

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