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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻㉑>ロシア、愛国主義政策に陰りか プーチン氏が狙う次のストーリーは 北海道大学特任助教 西山美久氏

北大特任助教の西山美久氏(舘山国敏撮影)
北大特任助教の西山美久氏(舘山国敏撮影)

 <にしやま・よしひさ>1985年、長崎県出身。九州大大学院博士課程単位取得退学。ロシアのサンクトペテルブルク国立大留学、日本学術振興会特別研究員などを経て、2019年6月から現職。今年4月から北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター共同研究員。著書に「ロシアの愛国主義 プーチンが進める国民統合」(法政大学出版局)。36歳。

■多民族国家の「凝固剤」

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナのゼレンスキー政権は「ネオナチ政権」であり、ロシア軍の侵攻は「非ナチ化」が目的だと主張している。国際社会は虚偽だと批判しているが、ロシア社会には一定程度受け入れられている。背景には、旧ソ連がナチス・ドイツを撃破した「大祖国戦争」(第2次世界大戦)の勝利は、多くのロシア人にとって祖父や祖母が、祖国と世界を守った誇るべき記憶であり、プーチン氏がこの記憶を自身の愛国主義政策の中核として利用してきたことがある。

 1991年に旧ソ連が崩壊し、共産主義やマルクス・レーニン主義が正当性を失ったことで、新生ロシアには国をまとめる精神的な紐帯(ちゅうたい)が必要だった。94年にはロシアからの独立を目指すチェチェン共和国との武力紛争も発生し、国民統合は重要な課題となっていたが、エリツィン政権は内外の問題の対応に追われて積極的に対処できなかった。

 エリツィン氏の後を引き継いだプーチン氏が、国をまとめる新たな理念として着目したのが「愛国主義」(パトリオティズム)だった。

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