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<電子版インタビュー>美唄で挑む!「白いダイヤ」を創り出せ 本間弘達さん(53)

 雪冷房の技術を生かしたウナギ養殖の実用化を目指し、奮闘する雪屋媚山商店代表取締役番頭の本間弘達(こうた)さん(53)。北海道内で唯一のウナギ養殖の実現を間近に控える起業家は、かつて、道内大手ゼネコンに勤めながら、雪冷房に関わる数々のプロジェクトの設計に関与してきた。しかし次第に、サラリーマン設計士としての活動の限界にぶつかる。進むべき道が見えなくなっていた中で直面した東日本大震災が「起業家・本間弘達」の原点になった。(文 梶山征広、写真 館山正敏)


<メニュー>
3.被災直後のマチ巡り 転身を決断
4.目標は「雪国の雪捨て場をすべて乗っ取りたい」

美唄で挑む!雪ウナギ、道内唯一の養殖実現へ 本間弘達さん(53)
<前編メニュー>
1.ウナギ養殖実現へ 雪が支える不思議な関係
2.「思いもよらなかった」 雪冷房との出合い
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/698577?rct=s_digital_interview

3.被災直後のマチ巡り 転身を決断

 2011年3月11日午後2時46分、道内大手ゼネコンの伊藤組土建に勤めていた本間さんは取引先と一緒に、札幌市内を車で移動中だった。地震で身の危険を感じるほどの揺れは感じなかったが、その後の予定はすべてキャンセルになった。伊藤組土建の本社へ戻り、テレビなどを通して被災地の厳しい状況を目の当たりにしているうち、いても立ってもいられなくなった。

 「そのまま帰宅し、自家用車に水や食料を載るだけ積み込み、陸路で被災地に向かいました。函館からフェリーで青森に入り、爆発事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所がある福島県双葉町まで、通行止めの場所があれば、内陸に迂回(うかい)しながら、東北地方の太平洋岸を1週間かけて南下しました。会社には『休みます』とだけ言い残して飛び出したので、戻ってから随分、怒られましたが(苦笑)」

 途中立ち寄った宮城県南三陸町の防災対策庁舎は、鉄骨だけになっていた。町職員ら39人が犠牲となった大津波の威力を目の当たりにし、これまで感じたことのなかった悪寒が走った。宮城県石巻市ではおびただしい数の遺体の前で、無力感にさいなまれた。あの時の記憶と衝撃は、自身の頭と体にしっかりと刻み込まれているものの、「適切な言葉で伝えられる自信はない」という。

東日本大震災に伴う津波の直撃を受け、鉄骨だけとなった宮城県南三陸町の防災対策庁舎(本間さん撮影・提供)
東日本大震災に伴う津波の直撃を受け、鉄骨だけとなった宮城県南三陸町の防災対策庁舎(本間さん撮影・提供)


 本間さんが被災地を訪れるのは、東日本大震災が初めてではない。大規模火砕流で死者・行方不明者43人を出した雲仙普賢岳(長崎県)の噴火(1991年5、6月)、大津波が奥尻島などを襲い、死者・行方不明者が230人に上った北海道南西沖地震(1993年7月)、6434人が亡くなった阪神大震災(1995年1月)、2000年3月の有珠山噴火など、大災害が発生するたびに最前線に何度も足を運んできた。

 本間さんを被災地に駆り立てるものは、何か。

 「私が被災地に行ったからといって、役に立つことなんてほとんどありません。むしろ邪魔な存在だということは分かっているんです。それでも、自分から現場に足を運び、直接見たことや、聞いたことしか信用できないんです。そうしないと納得することができないんですよ」

 そして、次の言葉に本間さんの設計士としての矜持(きょうじ)がこもる。

 「私は設計に関わる人間です。五感をフルに研ぎ澄まし、災害を体感することが必要だと信じるのは、私の子どもや孫の世代が災害に遭ったとしても、困ることがないようにしたいからです。自分が生きていないであろう50年後や100年後を見据えて仕事をするのが、最も大切な役割だと思っています」

 信念と義務感が足を向かわせた震災の現場。そこでみた光景が、本間さんの進む道を変える契機になる。

 「東日本大震災を通して実感したのは、人はいつ死ぬか分からないということです。私がきょう死んでも、何らおかしくありません。このまま会社に残り、役員になるのが人生の目標なのかといわれたら、決してそうではないなと。雪冷房の仕事にとことん取り組まなければ、死んでも死にきれないと思いました」

 もっとも、安定した会社員から飛び出すには相当な覚悟が必要だ。吹っ切らせたのは、テレビからなにげなく流れてきたACジャパンのCM。

 15秒のメッセージが、本間さんを転機へと導いていく。

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