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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑳>機能不全に陥る安保理 拒否権制限、改革のカギ 関西学院大教授 神余隆博氏

 <しんよ・たかひろ>1950年、香川県生まれ。大阪大卒。72年に外務省入省。国際社会協力部長などを経て2006~08年に国連大使。退職後、12~18年に関西学院大副学長。専門は国連、国際政治。編著に「国連安保理改革を考える」(東信堂)など。72歳。

◇ ◆ ◇


■大国に拒否権 なぜ認める

 ロシアはウクライナ侵攻直後の2月25日の国連安全保障理事会で、侵攻を非難する決議案の採決で拒否権を発動し、葬り去った。その後、国連総会で非難決議が可決されたものの、拒否権を持つ常任理事国が公然と近隣国を侵略した場合、安保理は機能不全に陥るという構造的な問題を改めて浮き彫りにした。

ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案を否決した国連安全保障理事会=2月25日、米ニューヨークの国連本部(ロイター=共同)
ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案を否決した国連安全保障理事会=2月25日、米ニューヨークの国連本部(ロイター=共同)


 拒否権を取っ払わない限り、機能不全は起き続ける。ただし、拒否権を取り除くとどうなるかというと、ロシアや米国は国連にいる意味がなくなり、大国を国連につなぎとめられなくなる。中国もそうかもしれない。国際連盟の二の舞にしてはいけないので、拒否権を残すのは仕方ないが、適切に行使してもらうようにするメカニズムをどうするか。これは1950年の朝鮮戦争開戦後に拒否権の乱用が始まって以来、安保理が抱える課題だ。

■複雑な対立構造 改革の障壁

 安保理改革は、92年に当時の宮沢喜一首相がその必要性を訴えて以来、足踏みが続いている。常任理事国を始め、加盟国にはそれぞれの国益や思惑があり、複雑な対立構造があって一枚岩になれないためだ。

 一つは既得権にこだわる常任理事国とそれ以外の国々。また、例えば常任理事国入りしたい日本、ドイツ、ブラジル、インドの4カ国グループ(G4)と、それを避けたい国々との対立軸もある。日本の場合は韓国、ドイツの場合はイタリア、インドはパキスタンとか、ある種の天敵と言える。

 さらに拒否権を持つ常任理事国を増やしたくないと思っている中小の国々のグループや、常任理事国を増やすなら自分たちもなるというアフリカのグループ、さらに無関心のグループもある。

■リヒテンシュタイン決議 変わる一歩

 ただ、今回のウクライナ侵攻は改革のきっかけになり得ると考えている。

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