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<興部 実践 脱炭素のまちづくり>上 家畜ふん尿で燃料製造

 「夢のような実験だ」。オホーツク管内興部町の酪農業藤渡雄起さん(33)は、町営の興部北興バイオガスプラント隣接地に5月下旬、完成したメタノール製造の実験棟に期待した。

■商業化目指す

 家畜ふん尿由来のバイオガスから、燃料となるメタノールを製造する。製造過程で温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)が出ない新技術の確立と、2030年度までの商業化を目指す。硲(はざま)一寿町長は「脱炭素の実現に向けた画期的な取り組み」と語る。

 施設は町と大阪大、エア・ウォーター北海道(札幌)、岩田地崎建設(同)の4者が共同で建設した。大阪大先導的学際研究機構の大久保敬教授(光化学)が町内で研究を進め、20年に世界で初めて成功させた製造技術を活用する。

 バイオガスに化合物を混ぜて発光ダイオードの光を当て、化学反応を起こして生成する。メタノールは燃料電池や船舶の燃料などに使用できるため、大久保教授は「この技術で日本をエネルギー輸出国にしたい」と力を込める。

 生成時にはギ酸も大量に発生し、飼料添加物への利用が見込める。当面、年間でメタノール6トン、ギ酸56トンを製造。町などは将来、製造能力を拡大し、バイオガス発電による売電と並ぶ収入源に育てる考えだ。

 酪農が盛んな町では、家畜ふん尿処理が大きな課題だ。解消に向け、町は16年にバイオガスプラントを建設し、民間プラント2基と合わせてエネルギーの地産地消や脱炭素のまちづくりを進めてきた。

■新技術に期待

 脱炭素の実現には、化石燃料の代わりとなるバイオガスなどの再生可能エネルギーの普及が鍵を握る。ただ道内では17年以降、送電線の空き容量不足などからプラント建設が停滞。さらに国の固定価格買い取り制度(FIT)が終了する36年以降は、売電価格の下落が予想され、町にとって不安材料となっている。

 このためメタノール製造に対する関係者の期待は大きい。藤渡さんは乳牛140頭を飼育し、2日に1回、約70頭分のふん尿をプラントに運ぶ。年間計2400トンで処理料は約100万円。以前は堆肥化して牧草地にまいていたが、臭いの問題などから経費をかけて処理している。ただプラントの容量には限りがあり、尿は全部を運ぶことができないのが悩みの種だ。

 町などによると、理論上はメタノール製造にふん尿量の制限はなく、需要次第で今後のバイオガスプラントの増設につながるという。藤渡さんは「プラント収支を安定させるためにも、実験がうまくいってほしい」と願う。(紋別支局の仲沢大夢が担当し、3回連載します)

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