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<社説>逮捕歴削除命令 表現の自由との調和を

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 ツイッターに投稿された逮捕歴が閲覧可能なのはプライバシーの侵害に当たるかどうかが争われた訴訟で、最高裁が投稿の削除を命じる判決を言い渡した。

 インターネット上に不名誉な個人情報が残ることで不利益を受けている人の救済を優先した。

 ネット社会の進展で救済すべきケースは今後も増加しうる。

 その一方で、削除の過度な強制は表現の自由を損ない、民主主義社会に不可欠な国民の知る権利を侵害しかねない。

 議論をさらに深め、表現の自由とプライバシーの保護が調和した社会を目指すべきだ。

 原告は10年前に建造物侵入容疑で逮捕され、実名のネット記事がツイッターに転載された。

 元の記事は既に削除されたが、ツイッターには投稿が残り、原告は就職活動や交友関係に支障が出たと訴えていた。

 最高裁は2017年、検索サイトのグーグルが対象の訴えで、プライバシーを守ることの方が検索サービスの役割より「明らか」に大事な場合、犯罪歴を削除できるとする基準を示している。

 しかし「明らか」を満たすハードルは高く、同種裁判では削除を認めない判断が続いていた。

 最高裁は今回、「明らか」の文言を外して要件を緩和し、ツイッターへの投稿は「速報が目的で、長期間の閲覧は想定されていない」として削除を命じた。ツイッターの利用実態を重視したと言える。

 ただ、どのような犯罪で、逮捕からどれだけ過ぎれば削除できるかといった具体的な基準は示さず、あいまいさは残された。

 高度な倫理性が求められる政治家や社会的影響力のある人たちの犯罪歴が削除されれば、国民の知る権利の侵害になりうる。

 裁判所は今後個々の事例を検討する際、国民の諸権利と事件の重大性などを慎重に比較検討していくべきだろう。

 ネット事業者は削除に関する自前の基準を積極的に公開し、社会の評価を受けた上で不断に見直していく姿勢が求められる。

 欧州連合(EU)では、知られたくない自身の情報を削除する「忘れられる権利」が法制化されている。グーグルなども域内では犯罪歴を含む多様な個人情報を当事者の要請を受けて削除している。

 一方、表現の自由を尊重する米国では削除への慎重論が根強い。

 欧米の実情を参考に、日本にふさわしいルール作りに向けた議論を本格化させる必要があろう。

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