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<電子版インタビュー>美唄で挑む!雪ウナギ、道内唯一の養殖実現へ 本間弘達さん(53)

 道内では誰も手掛けていないウナギ養殖の事業化を目指して、美唄市内で2022年2月から試験養殖を始めた経営者がいる。雪屋媚山(ゆきやこびやま)商店の代表取締役「番頭」を名乗る本間弘達(こうた)さん(53)。雪冷房の設計コンサルタントとして、道内外の有名施設の設計を数多く手掛けてきた。民間では国内随一の雪冷房のスペシャリストがなぜ、本業とは畑違いのウナギ養殖に乗り出そうとしているのか-。本間さんの過去から現在、そして未来への展望をひもとくと、納得の狙いが浮かび上がってきた。(文・編集局デジタル委員 梶山征広、写真・写真部 舘山国敏)

ウナギ養殖の事業化を目指す雪冷房のスペシャリストの本間弘達さん
ウナギ養殖の事業化を目指す雪冷房のスペシャリストの本間弘達さん

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1.ウナギ養殖実現へ 雪が支える不思議な関係
2.「思いもよらなかった」 雪冷房との出合い

1.ウナギ養殖実現へ 雪が支える不思議な関係

 広大な敷地が広がる美唄市内の空知工業団地の一角。直径4・5メートル、高さ1メートルの円柱型水槽の上に掛けられた遮光シートを、本間さんが外した。中をのぞくと、ほどよい太さのウナギ十数匹が、かごの中でにょろにょろうごめいている。「出荷サイズ」という体長約70センチにまで成長したウナギたち。しばらくの間、室内灯の光で黒光りする体をくねらせた後、水中へと姿を消していった。

 「ウナギは明るさが苦手なんです。エサをくれないと気付いたから、かごから出ていったのでしょう。エサやりは1日1回と決まっています。むやみやたらに与えて、太らせすぎても駄目ですから」

 本間さんは“現金”なウナギたちの様子を見て、苦笑いを浮かべた。

かごの中で元気よく泳ぐ養殖試験中のウナギ
かごの中で元気よく泳ぐ養殖試験中のウナギ


生育状況に応じて大小の水槽が並ぶウナギ養殖試験施設
生育状況に応じて大小の水槽が並ぶウナギ養殖試験施設


 ウナギの生育状況などを確認する試験養殖は2022年2月に始まった。長さ50メートル、幅9メートルの大型ハウスの中に、円柱形の10トン水槽1基と、立方体形の1トン水槽3基をそれぞれ設置。稚魚1700匹が大きさに応じて、各水槽のなかで育てられている。2022年秋には水産庁にウナギ養殖業の許可申請を行い、2023年度から本格的に養殖事業に参入する構え。月に2万7千匹を生産する計画だ。

 国内のウナギ養殖量は減少傾向にある。水産庁が2022年5月にまとめた「ウナギをめぐる状況と対策について」によると、国内のウナギ供給量は資源が減っていることから、2000年の約15万8094トンをピークに減少が続いている。2021年の国内養殖量は供給量(6万2926トン)の約3分の1ほどの2万573トン。国内の天然生産量はわずか63トンしかなく、残りのほとんどは中国などからの輸入に頼っている。

 資源管理の必要性から2015年には、国内のウナギ養殖業について指定業者の許可制が導入され、稚魚の数量も厳格に管理されることになった。2022年漁期の許可件数は31府県456件。しかし、道内に許可業者は1件もない。

 このため、ウナギ養殖の試験開始のニュースが流れると、道内のウナギ専門店から入荷の相談が相次ぎ、本間さんは期待の大きさを肌身に感じた。「北海道ウナギ」の珍しさもあって、道内だけでなく、道外からも問い合わせが殺到した。

 「これまで北海道はウナギ業界の地図に入っていませんでした。ウナギの養殖がさかんなのは、鹿児島や宮崎などの九州地方や、愛知、静岡などの中部地方です。このため、道内のうなぎ屋さんは、ウナギの輸送に伴うコスト高やリスクに悩まされてきました。航空輸送費が高く、輸送時間がかかるため、急な数量変更に対応できないほか、雪で飛行機が飛ばないと、入荷が止まってしまいます。遠距離だと運搬中にウナギが死ぬ可能性も高まります。道内での養殖が実現すれば、こうしたマイナス面が大きく改善されると期待されています」

 肝心の味の方はどうなのだろう。

 「5月に札幌の専門店の協力を得て、出荷サイズになった何匹かをさばいて食べました。味は『普通の国産ウナギ』って感じでしたよ(笑)。輸入物に多い皮のゴワゴワ感はなく、身もホクホクしていました。脂の乗りがもう少しあった方がいいかとは思いましたが、まだ試験段階ですから。練り餌もいろいろと試しながら、おいしいうなぎを育てていきたいと思います」

水槽内で順調に生育し、元気に泳ぐ養殖ウナギを見つめる本間さん
水槽内で順調に生育し、元気に泳ぐ養殖ウナギを見つめる本間さん


 実現すれば、画期的な道内でのウナギ養殖。だが、取材を進めるほどに、疑問は深まっていく。そもそも雪冷房の専門家であるはずの本間さんがなぜ、まったくの畑違いであるウナギの養殖に取り組んでいるのか。

 ナゾを解くカギは、本間さんが中心人物として関わってきた雪冷熱などの再生可能エネルギーを活用した「美唄ホワイトデータセンター(WDC)構想」のなかに隠されていた。

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