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<社説>再審の重い扉 救済意義尊重すべきだ

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 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった大崎事件で、鹿児島地裁が殺人罪などで服役した義姉の原口アヤ子さんの再審開始を認めない決定をした。

 弁護側が出した新証拠では確定判決は覆されないと結論付けた。

 これまで地裁や高裁が確定判決に3度疑義を呈し再審開始を決めたが、2019年に最高裁が異例の取り消しを行った経緯がある。

 「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則は本来、再審にも適用されるはずだ。

 しかし確定判決に合理的な疑いを示せば足りるのに、弁護側に無罪の立証までを過度に求めた点が今回の決定にはうかがえる。疑問が拭えない判断である。

 再審の門戸を狭めようとする従来路線を踏襲したように映る。

 95歳の原口さんは一貫して無実を訴えてきた。再審は冤罪(えんざい)被害者を救済する最後の手段だ。司法はその意義を重んじ、救済の機会を拡大する方向へ踏み出すべきだ。

 確定判決で男性は酒に酔い自転車ごと側溝に転落し、近隣住民に自宅に運ばれた後、原口さんらに絞殺され埋められたとされた。

 第4次となる再審請求で弁護側は絞殺ではなく事故死との立場から、男性が自宅に運ばれた時には死亡していた可能性を示す新たな医学鑑定などを提出した。

 だが鹿児島地裁は「死体を直接検分せず、写真の限定的な情報に基づく推論だ」と退けた。19年の最高裁の論理をほぼ踏襲した。

 前回の第3次再審請求審で高裁は、男性の死因は出血性ショックの可能性が高いとする弁護側の鑑定を認め、再審開始を決めた。

 今回それが考慮されなかった点には元裁判官有志も抗議声明を出した。重く受け止めるべきだ。

 司法判断の安定性を優先しただけではなく、確定判決を覆されまいとして体面を気にした―。そうみられても仕方あるまい。

 大崎事件同様に自白の信用性が疑われた布川事件をはじめ、再審無罪となった人もいる。

 基本的人権を尊重する憲法の下で、無実の人が処罰されるのは絶対にあってはならない。訴えと証拠に誠実に向き合い、確定判決をゼロベースで検証するのが再審の大切な役割だ。

 再審制度は刑事訴訟法に手続きの定めが不十分で、進行が裁判所任せになっている実態がある。

 再審開始決定に検察が即時抗告できる仕組みも再審請求審が長引く要因だ。重い扉を開けるための法整備が急がれる。

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