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再開の観光船、安全徹底 知床事故2カ月、記者が乗船 風速8メートル、目的地手前で折り返し

 【斜里】知床半島沖で乗客乗員26人を乗せた小型観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故から23日で2カ月たった。いまだ行方不明者の捜索が続く中、カズワンと同じウトロ漁港を拠点とする小型観光船3社は安全に関する「自主ルール」をつくり、2社は16日から営業を再開している。町内には観光客の姿もあり、少しずつ日常を取り戻しているようにも見える。23日、記者が小型観光船に乗り、知床観光の今とこれからを見つめた。

 ウトロ漁港は風も弱く海面は穏やかだった。午前9時、この日乗る「ゴジラ岩観光」の事務所前に乗客が集まってきた。

 同社は、複数の民間会社の予報を参考に航路上の気象を把握するという。この日は午前8時時点で、晴れ、風速3~5メートル、波の高さは0・5メートル、視界は良好。3社がつくった自主ルールによると、運航中止の基準は「航路上の波の高さが1メートル以上、風速8メートル以上、視程が300メートル以下」。必ず複数社で協議し、判断が分かれた場合は全社欠航するとした。この日もゴジラ岩観光と、別の小型観光船「ドルフィン」の運航会社の2社の船長らが話し合い、出港を決めた。

 記者が乗る便は、事故のあった「カシュニの滝」手前で折り返す「ルシャコース」。乗客は記者とカメラマンを含め14人。全員ライフジャケットを身に付け、午前9時24分に出港した。10分ほどたったころ、記者のKDDI(au)の携帯電話は圏外になった。

 営業再開前日の15日、記者はこの船の安全点検も取材した。新たに備えた業務用無線など安全装備を一通り見て、客席下にある狭い機関室にも入らせてもらった。浸水を知らせる法定外品の「ビルジ警報」は手のひらより少し大きいくらいの箱。「こんな小さいのか」と驚いたが、「これがあるから航行中の浸水に早く気づけるんだ」と知った。

 知床連山を見渡しながら、「フレペの滝」や「カムイワッカの滝」、切り立った断崖を間近で眺められるのは小型船ならでは。「黄色い岩のところ、クマが歩いていますよ」と、山谷貢船長のアナウンスが流れた。「これ以上岸に近づくと航路を外れてしまうから、双眼鏡でのぞいてみて」。確かに親子のクマが岩肌を歩いているのが見えた。

 人気スポットの「ルシャ湾」に近づいた10時半ごろ、前方の山肌に雲がかかっているのが見えた。急に空気が変わり、突風に近い冷たい風が吹いた。この強風のことを地元では「ルシャおろし」と呼ぶという。

 船長が風速計を取り出した。風速は8メートルほど。「今日は風が強くてルシャ湾まで行けません。これ以上進むと10メートル以上になるかもしれない」。業務用無線でドルフィンと連絡を取り、ルシャ湾の手前3キロほどで折り返すことにした。

 折り返し地点で、その先の海に向かって乗客が手を合わせていた。愛知県の野口好信さん(69)は「行方不明の方が早く見つかってほしい」と、用意していた花束を海に投げ入れた。

 戻る途中、岸にいたヒグマ2頭を見ながら時間を調整し、予定通り午前11時半、漁港に戻ってきた。

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