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<デジタル発>ヒグマ、住宅街近くでなぜ繁殖? 札幌・三角山 生態に詳しい職員が襲われたわけは…

 札幌市西区の三角山(311メートル)で3月31日、ヒグマが冬眠する穴(冬眠穴)を調査していた札幌市内のNPO法人の男性職員2人が穴から出てきた雌グマに襲われ、重軽傷を負った。その後、穴の中で2匹の子グマが見つかり、住宅街からわずか500メートル圏内でヒグマが繁殖している事実に専門家の間で衝撃が走った。ヒグマの生態に詳しいはずの職員はなぜ襲われたのか、どうして雌グマは人里のすぐ近くに冬眠していたのか。最初に襲われた男性職員のAさん(47)に当時を振り返ってもらった。(内山岳志)

襲われた際の様子を振り返るNPO法人の男性職員Aさん
襲われた際の様子を振り返るNPO法人の男性職員Aさん


 Aさんがヒグマとの関わりを持ったのは1996年の北大農学部4年生の時だ。苫小牧市周辺の山林に生息していた雄グマに発信器を付けて動態を把握する調査を始め、大学院でも続けた。院修了後は、NPO法人職員として道南でヒグマの調査や対策業務に就いた。2010年からは札幌市が始めた市街地でのヒグマ出没調査を担うようになった。


 調査は市街地でヒグマの目撃情報があれば、市職員と共に現場に出向いて足跡や毛、ふんなど痕跡がないか調べ、目撃者にも聞き取りを行い、本当にヒグマだったかの判断を支援するのが主な内容だ。銃や箱わなによる駆除は猟友会の会員が担うが、Aさんは目撃情報に信ぴょう性があるかを見極めて危険性を評価し、必要な対策も助言する。ヒグマの生態を熟知していなければ担えない業務で、いわばヒグマ対策のコンサルタントだ。

ヒグマの冬眠穴が見つかった三角山。奥には市街地が広がる=3月31日(本社ヘリより中川明紀撮影)
ヒグマの冬眠穴が見つかった三角山。奥には市街地が広がる=3月31日(本社ヘリより中川明紀撮影)

■登山道から100メートルで冬眠?

 市民から三角山で冬眠穴らしき穴を見つけたとの情報が札幌市西区役所に寄せられたのは3月13日正午ごろだった。写真も添付してあり、雪深い斜面に小さな穴があり、周囲には通報者が連れていた犬の足跡も映っていた。市が冬眠穴らしき穴を発見したとの通報を受けたのは初めてだった。登山道を管理する市みどりの管理課は14日、西区役所を通じて通報内容を知らされ、登山道を閉鎖した。

 さらに同課とヒグマ対策を所管する環境共生担当課は15日、通報者に聞き取り調査を行った。通報者は「穴の場所は登山道から100メートル以上離れた場所だった。2月に見つけた時は30センチ弱の穴で、その後、大雪で穴は見えなくなり、3月に再び訪れると10センチ程度の穴があった」と答えた。手が届くくらい手前まで近づいたが、臭いや足跡などヒグマの痕跡はなかったという。

■写真に細長の穴

 両課がAさんに聞き取り内容や提供写真を渡して評価を仰いだのは15日の聞き取り調査直後だった。写真に写っていた穴は幅約30センチ、縦数センチから10センチ程度の細長い穴で、Aさんは当初、「小さな穴の中にササが一部見えた状態で周囲の状況も分からなかった。写真だけでは判断しかねるというのが正直な感想だった」と振り返る。

 ただ、《1》通報者と犬が穴に何度か近づいているのにこれまで反応がなかった《2》住宅街から400~500メートルと近く、冬場も多くの人が行き交う登山道から100メートル余りの距離で、冬眠に適した環境とは言えない《3》冬眠穴ならヒグマの体温によって穴の縁の雪解けが周囲より進むが、提供写真ではその形跡はうかがえない。穴の周りに土の汚れなどクマが出入りしたような痕跡も見当たらず、雪解けに伴う穴のように見える―という特徴があった。こうした状況からAさんはこの時点で、「冬眠穴である可能性は低い」と判断し、市側に伝えた。

 だが、この判断には大きな落とし穴があり、後に人身事故に発展する結果となる。

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