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<社説>福島の避難解除 国に地域を支える責務

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 東京電力福島第1原発事故の影響で住民が立ち入れなかった福島県の帰還困難区域の一部で、避難指示が来月から順次解除される。

 居住地域では初の解除となる。

 事故から11年が過ぎ、被災地は荒廃が進んだ。帰還を目指す人々にとって暮らしの再生は厳しい。

 帰還を断念せざるを得なかった住民にとっても、かけがえのない故郷である。

 避難者が起こした裁判のうち国の責任を控訴審で初めて認めた2020年9月の仙台高裁判決は、東電の津波対策の先延ばしと、国の監督の甘さが事故の背景にあったと厳しく指摘した。

 それらを踏まえれば、地域が将来展望を描けるよう支え続けるのは国の当然の責務である。東電は償いを十分に果たすべきだ。

 放射線量が高いため避難指示が今も残るのが帰還困難区域だ。原発周辺の7市町村に広がる。

 政府はそのごく一部の旧市街地などを特定復興再生拠点区域に認定し、除染などを進めてきた。

 避難指示は来月12日に原発の北西約20キロの葛尾(かつらお)村でまず解除され、原発が立地する双葉、大熊両町も続く見通しとなっている。

 しかし生活インフラや医療環境などの整備はまだ不十分で、地域への国の支援は今後も必要だ。

 課題は、戻る住民が少ないと見込まれることだ。葛尾村では帰還の意思を示すのは4世帯のみ。双葉、大熊両町の住民意向調査では6割が「戻らない」と答えた。

 国は当初、放射線量の高い地域の居住を「将来にわたり制限する」とした。だが16年にその一部を解除する方針に転じた。

 放射線量が低下したためだが、すでに避難先などで新しい生活に踏み出した住民が多かった。

 それでも故郷とのつながりを保ちたいと願う住民は双葉町で7割近く、大熊町では8割に達する。

 帰還するかしないかを問わず隔てなく住民に寄り添い、故郷を復元する―。その責任を果たすのが国の取るべき道である。

 被災自治体はまちの再建に苦心している。拠点外の広範な除染も求めている。最大限の手だてを講じてもらいたい。

 被災者への損害賠償を巡っては、その目安となる政府の審査会の「中間指針」の不十分さがかねて指摘されてきた。最高裁では当初の算定額を上回る賠償を東電に命じた判決が複数確定している。

 国と東電は過酷な被害実態を踏まえ、被災者の立場で対応する姿勢を忘れてはならない。

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