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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑯>経済制裁、省エネが最も有効 化石燃料の脱ロシアは再エネと両輪で 都留文科大教授 高橋洋氏
<たかはし・ひろし>1969年、兵庫県生まれ。東大法学部卒業後、ソニー、富士通総研などを経て2015年から現職。菅義偉政権時に立ち上げた内閣府再生可能エネルギー規制総点検タスクフォース委員を務める。著書に「エネルギー転換の国際政治経済学」(日本評論社)など。専門はエネルギー政策。52歳。
■依存度高いドイツ 対応苦慮
ロシアは世界最大級の化石燃料輸出国だ。日本や欧州のエネルギー安全保障はロシアの動向によって影響を受けざるを得ない。特にドイツは天然ガスの6割をロシアに依存しており、これまでパイプラインで輸入していたものを他国から液化天然ガス(LNG)として輸入するために国内にLNG貯蔵基地の建設を進めるなど対応に苦慮している。
日本はどうか。ロシアとの関係では天然ガス輸入の8・3%、原油輸入の4・8%、石炭輸入の9・9%を依存している(2019年度)。ただ、欧州と比べれば依存度は低い。しかもロシアが日本への天然ガスを止めるという話は今のところない。ロシアの輸出総額の半分がエネルギーであり、日本は優良顧客だからだ。戦争を続けるためにも、エネルギーの輸出は止められない。ウクライナ危機というショッキングな出来事が起きて、エネルギーが逼迫(ひっぱく)するという声が出ているが、天然ガスや原油などの化石燃料の絶対量が、今すぐ不足する状況ではない。
一方で世界の原油価格が高騰し、ロシアは欧州の一部の国に天然ガスについてルーブルによる支払いなどを要求した。これらの影響をうけて石炭価格も上昇している。日本の電源(発電所)のうちおおむね3割が石炭火力、4割が天然ガス火力で構成されている。これらの燃料費が上がっている以上は電力価格が当面は下がる要因は見当たらないのも事実だ。
ウクライナ危機で分かったのは、エネルギー供給を化石燃料に依存している限りは同じことを繰り返すということだ。
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