PR
PR

<社説>こどもの日に だれしもが幸福な未来を

[PR]

 新型コロナ禍が始まってから3回目の春がやってきた。行動制限が大幅に緩和され、季節を楽しむ雰囲気が久々に広がっている。

 だが足元の厳しい現実から目を背けてはならない。

 2年超続く新たな感染症の流行は人々の健康を脅かし、平穏な日常を損なった。その打撃は社会の弱い部分に深刻な影響を与えた。子どもたちの状況は一層厳しい。

 不登校や自殺の件数は過去最多となった。コロナで心身を傷つけられた子どものSOSも含まれよう。経済的困窮も広がる。

 この世に生を受けた子どもは健やかに成長する権利を平等に持っている。コロナ時代に直面し、境遇が厳しいからといって、未来を奪われていいはずがない。

 それぞれが自分らしく生き、希望をかなえられるよう社会全体で支える必要がある。こどもの日のきょう、あらためて考えたい。

■幸福度の低さ際立つ

 日本の子どもは身体的な健康度は高いが、精神的な幸福度は極めて低水準にある。国連児童基金(ユニセフ)が一昨年に公表した調査は憂慮すべき状況を示す。

 先進・新興国38カ国のうち、日本の精神的な幸福度は37位だ。生活満足度の低さなどが影響した。学力や友人関係の指標、学力・社会的スキルも27位に低迷する。

 教育評論家の尾木直樹さんは教育の問題点を指摘する。受験などで競争原理による序列化が進む一方、いじめが後を絶たず自己肯定感が損なわれているという。陰惨な旭川のいじめは記憶に新しい。

 校則などでがんじがらめに管理し、多様性を認めない教育が子どもの自発性をそいでいる。

 自らを尊重して生きるには自己決定権が重要になる。土台となるのが日本も1994年に批准した「子どもの権利条約」である。

 条約は子どもが意見を表明する権利や、文化や余暇などの活動に参加する権利もうたう。根底に子どもを権利主体と見なし、その判断を尊重する考えがある。

 批准から30年近くたつのに国内での浸透は十分とは言えまい。まず教員や大人が理解を深め、当事者である子どもが学校や家庭で生かせるよう手助けしてほしい。

 自己決定権を後押しする動きもある。下着の色まで指定するような理不尽な校則を変える試み、ジェンダーに配慮した制服の選択制は好例だ。流れを広げたい。

■厳しさ増すコロナ禍

 コロナ禍のしわ寄せを最も強く受けるのが子どもたちだ。

 親が仕事を失うことで家庭不和や虐待が増えている。子どもの貧困は厳しさを増し、家庭の経済力の違いによる学力や進学機会の格差は一層広がった。

 外出制限の長期化は生活リズムの乱れや体力低下を招き、外遊びや行事を激減させた。小中学生の不登校は過去最多となり、いじめの認知件数も高止まりが続く。

 この半世紀を振り返っても、これだけ多くの子どもが長くストレスを受け続けた例はなかろう。

 解決すべき問題は山積する。弱い立場にある子どもを守るためにあらゆる対策を急ぐべきだ。

 悩みを抱え込み孤立しないようSOSの出し方を教えることが重要になる。周囲の大人が様子に目を配り、耳を傾ける必要がある。

 教員不足を解消し、スクールカウンセラーや相談窓口の拡充を急ぎたい。児童相談所などの行政機関、子ども食堂を担うNPOなど官民の連携も不可欠だ。

 長期不況がもたらした「氷河期世代」の苦境を見るまでもなく、社会の現状は子どもたちの将来像に直結する。「コロナ世代」が生じるのを座視してはならない。

■司令塔たり得るのか

 子育て支援や少子化対策といった子ども政策の司令塔「こども家庭庁」設置法案の審議が、大型連休明けから本格的に始まる。

 岸田文雄首相は「子ども政策を社会の真ん中に据えていく」と意気込み、来年4月発足を目指す。

 内閣府や厚生労働省、文部科学省にまたがる所管を一本化し、縦割り行政を解消する―。菅義偉前首相が示した当初の構想は、根幹部分が骨抜きになった。

 幼稚園や義務教育は文科省の所管から変えず、幼稚園と保育所、認定こども園をまとめる「幼保一元化」を結局見送った。

 出発点では「こども庁」だった名称も、家庭を重視する自民党保守派の意見に配慮して変えた。

 子どもを社会全体で支える理念が薄まったのは間違いない。子ども一人一人の目線に立って必要な施策を練ることが大切である。

 優先すべきは、先進国中でも低水準にとどまる子育て関連予算を底上げすることだ。財政的な裏付けと実効性ある施策を打ち出してこそ真の司令塔となり得よう。

 子どもたちを救う未来への道筋を示すため、国の責任は重い。

北海道のニュースがメールで届く
PR
ページの先頭へ戻る