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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑮>漁業交渉、日ロつなぐ「強い糸」 サケ・マス妥結は高く評価 北海学園大開発研究所長 浜田武士氏


 <はまだ・たけし>1969年、大阪府生まれ。北大大学院水産学研究科博士後期課程修了。東京海洋大准教授などを経て2016年から北海学園大教授。22年4月から現職兼任。専門は地域経済論、水産政策論。水産庁の水産政策審議会特別委員を務めた経験も持つ。共著に「漁業と国境」など。53歳。

◇ ◆ ◇


■ウクライナと切り離し対応か

 22日に妥結した日ロ政府間のサケ・マス漁業交渉は、ロシアが日本を「非友好国」に指定する中での異例の交渉となった。交渉結果から明らかになったのは「漁業交渉は、ウクライナ情勢を巡る対立とは切り離して粛々と、冷静に行う」というロシア側の基本的姿勢だった。一年を通じて大きく四つある日ロ漁業交渉のうち、日本200カイリ水域内ということから、最も妥結のハードルが低いのが今回のサケ・マス交渉だ。もし今回決裂していたら、後に控える交渉はすべて合意できなかっただろう。その意味でも、水産庁の粘り強い交渉は高く評価されよう。

 ただ私は、ロシアが交渉のテーブルに乗った以上は、妥結するだろうと当初から予想していた。日ロの漁業交渉は、冷戦時代も含めて、どんなに両国の関係が悪化していても、脈々と続いてきた歴史があるからだ。ロシア国内で、今回の交渉結果に反発する報道がほぼ見られないのも、ロシアの政府や漁業関係者が、日本との交渉を非常に冷静に受け止めていることの現れだ。

 日本がロシア側に支払う漁業協力費の下限を、前年より6千万円も低い2億円で合意できたことも大成功と言える。前年と同じ2050トンの漁獲枠を維持できたことの意義も大きい。近年はサケ・マスが不漁で、昨年の漁獲実績を見ても、漁獲枠の半分も捕れていない。ただ、一度でも漁獲枠を削ってしまうと、なかなか復活させることは難しいのが現実だ。サケ資源がいつ回復するかは誰にも分からず、数年後には急に捕れだすかもしれない。漁獲実績の多寡にかかわらず、漁獲枠は日本側の「権益」として維持しておくことが重要だ。

■日本の協力費「大きな国益」

 ウクライナ侵攻を受け、日本がロシアに厳しい経済制裁を科す中、なぜロシアが日本の協力費の減額要求などを受け入れたのか、不思議に思った人も多いだろう。

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