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<デジタル発>ハンターも惑わすヒグマ 初心者ハンター記者が見た緊迫の捕獲現場

 熟練ハンターが初心・中堅ハンターにヒグマ捕獲の技術を伝える道の認可事業「人材育成捕獲」が13日、根室管内標津町で行われた。根釧地域では近年、人や飼い犬、放牧牛がクマに襲われる被害が相次ぐ。だが、高齢化などを背景に駆除を担える熟練ハンターは年々減少しており、技術の伝承は急務だ。猟銃所持歴4カ月の初心者ハンターの記者が銃ならぬカメラを携えて育成捕獲に同行し、残雪が残る林野でハンターがヒグマを追い込む現場を見た。(中標津支局 小野田伝治郎、写真も)

標津町内の山林でクマ捕獲の作戦を確認しあうハンター
標津町内の山林でクマ捕獲の作戦を確認しあうハンター


 13日午前9時半、標津町役場前にピックアップトラックがずらりと並び、ハンター13人が集合した。人材育成捕獲の参加者たちだ。先生役は近隣自治体からクマの駆除や生態調査を受託している町内のNPO法人南知床・ヒグマ情報センターの黒渕澄夫事務局長(73)、赤石正男業務課長(69)らスタッフ4人に、北海道猟友会中標津支部のハンター4人を加えた計8人。生徒となったのは、標津町農林課自然保護専門員長田(おさだ)雅裕さん(42)ら近隣の中堅ハンター5人だ。このほか記者と標茶町農林課林政係でクマ対策を担当する宮沢匠係長(37)がそれぞれ取材と視察の目的で同行した。

 猟銃は《1》射程が数百メートルから1キロ程度と長く、弾の威力もあるライフル銃《2》射程が数十~数百メートル程度の散弾銃―に大別される。大型獣のクマを仕留めるには一般的にライフル銃が使われるが、ライフル銃の所持は原則として、散弾銃所持歴が10年以上にならないと許可されない。今回の育成捕獲の生徒のうち、ハンター歴10年余りの長田さんら2人はライフルを持参したが、残り3人は10年未満のため、散弾銃の中でも比較的射程が長くて威力もあるハーフライフルを持ち込んだ。記者は2019年に狩猟免許を取り、21年12月にハーフライフルを初めて所持した。狩猟経験は11回のシカ猟のみで、将来はクマ駆除にも参加したいとの思いを秘め、今回の人材育成捕獲に同行した。

標津町役場前で作戦会議をする参加者
標津町役場前で作戦会議をする参加者


 集合場所の町役場前ではまず、先生役が猟場となる町北部の山林の航空写真を配った。前日の下見でクマがいることは足跡などから確認済みで、ハンター歴50年の大ベテラン赤石さんは「今時期、クマはこの河原でイラクサ食ってんだ」と写真を指さし、中央に幅数メートルの薫別川が流れる地形の概略を説明した。

■猟法は「巻き狩り」に

 このあと先生役8人が作戦会議を開き、この日の猟法を「巻き狩り」に決めた。ハンターが足跡を頼りにクマを見つけ出して特定の場所に追い込む「勢子(せこ)」と、その場所でクマを向かい受けて仕留める「待ち」に分かれる伝統的な猟法だ。勢子も待ちも複数人のグループとなるのが通常で、ハンターが減った近年は実践例が少なくなっている。だが、この日は総勢13人のハンターが集まったため、採用することになった。


 具体的な作戦は、クマが薫別川下流の左岸の低湿地に身を潜めていると予想し、勢子は左岸と右岸の両側に展開し、下流から上流に向かってクマを追い立てることにした。一方の待ちも左岸にメイン部隊、右岸に見張りを兼ねたサブ部隊を配置し、クマを迎え撃つという手はずだ。

 役場前で打ち合わせすること10分、いよいよハンターが乗ったピックアップトラックが列をなして出発し、国道を通って猟場のある北へ向かった。右を向くと根室海峡、左は牧草地や山林が続く。日当たりの良い牧草地は雪解けが進み、枯れ草の茶色が目立つ。山林の地面を覆う残雪も解けて黒みがかっているが、記者を同乗させてくれた黒渕さんは「時期的に遅く、雪はだいぶ腐って(解けて)いるけど、この深さなら足跡を追えるよ」と話した。

町道に入ったハンターの車列。徐行して道路脇の足跡を確かめる
町道に入ったハンターの車列。徐行して道路脇の足跡を確かめる


 途中、海沿いを走る国道を左に折れ、両側が山林に囲まれた町道に入ると、車列は徐行を始めた。狙っているクマが町道を渡って猟場から出ていないか、車上から道路脇の足跡を一つ一つ確認しているのだ。「どれがクマの足跡なのか、いつのものなのか、どういった行動をしていたのかを読んでクマを追跡するんだ」。黒渕さんはこう説明した。

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