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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑭>対ロ世論に「3つのバイアス」 都合いい解釈、SNSが増幅 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授 宇山智彦氏


 <うやま・ともひこ>1967年、東京都出身。ソ連時代末期のモスクワに留学後、東大卒業。在カザフスタン大使館の初代専門調査員などを経て、東大大学院博士課程中退。96年、北海道大学スラブ研究センター助教授、2006年から現職。専門は、中央アジア近代史・旧ソ連諸国政治。54歳。

◇ ◆ ◇


■うそと暴力 危険な政権

 ロシアによるウクライナ侵攻は24日で2カ月となるが、私自身、ここまで無謀なことをやるとは思っていなかった。ドンバス地域と呼ばれるウクライナ東部の二つの「人民共和国」にウクライナ軍との激戦を起こさせて、ロシア軍が介入していくと思っていたが、実際はドンバスの紛争状況にそれほど変化がないまま、全面侵攻に至った。

 プーチン大統領周辺の悪知恵を結集し、ウクライナ南部クリミア半島をほぼ無血で編入した2014年の状況とも違い、8年間、ウクライナに圧力をかけ続けたのに、一向に思い通りにならないということにしびれを切らした行動に映る。プーチン氏と一部のロシア人の感情であり、ロシアの国際社会での地位や経済的な発展といった、国益を考えたものではない侵攻だった。極めて非合理な判断だ。

 ただ、プーチン政権は極めて危険な政権であることは間違いなかった。プーチン氏は旧ソ連の国家保安委員会(KGB)出身で、対外諜報(ちょうほう)の分野だった。つまりうそをつくことには抵抗がない。そもそも血で血を洗う1999年からの第2次チェチェン戦争で名をはせ、大統領としての権力基盤を確立したのがプーチン氏だ。手段を選ばずに勝つということを成功体験とし、暴力を使うことにはちゅうちょしない。うそと暴力という二つの面は早くからあった。

■「冷戦の敗者」西側の扱いに不満

 より広く言えば、帝国解体後の後始末がうまくいかなかった。

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