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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑫>避難民、一生引き受ける覚悟を 支援基盤、難民に広げて 認定NPO法人難民支援協会代表理事 石川えり氏


 <いしかわ・えり>1976年生まれ。東京都出身。99年3月、上智大法学部卒。在学中に難民支援協会の設立に参画し、民間企業勤務を経て2001年に同協会入り。アフガニスタン難民支援などを担当し、事務局長を経て現職。上智大、一橋大国際・公共政策大学院の非常勤講師も務める。45歳。

◇ ◆ ◇


■「特定活動1年」その後の保証は

 3月2日、ロシアのウクライナ侵攻から1週間のタイミングで、岸田文雄首相がウクライナからの避難民の受け入れを表明したことは迅速だった。それはこの20年間、起きなかったことだ。そして日本社会の大多数もその判断を支持しているように見える。

 ウクライナからの避難民について、前提として理解しなければならないのは、自らが国を逃れて日本に来ることを想像すらしていなかったということだ。逃れてくる間には家族との別れなどさまざまな過酷な経験をし、日本に来てもすぐには帰国する選択肢はない。入国直後からの支援が重要になる。

 政府は「短期滞在90日」のビザで受け入れ、必要に応じて「特定活動1年」の在留資格に変更申請できるようにしている。身寄りがない人の宿泊先の確保、食料、医療費の保証などを行い、最低限、物理的に生活できるようにし、宿泊先を出た後も12歳以上は日額2400円などの生活費も支給している。これらも前向きな対応だと考えている。

 ただ、特定活動1年は更新できることが示されたが、それは何年間可能なのか、特定活動の在留資格となるに伴って何が保証されるのか。これらを政府は明確に示していない。仮に明日、ウクライナとロシアが停戦に合意しても、安心して帰国できるようになるまでにウクライナが復興するのは、場所によってはかなりの時間を要するはずだ。

 少なくとも受け入れ側は中長期的に、さらに言えば一生を引き受けるくらいの考えを持たなければならない。その上で、ご本人たちが帰国できるという状況になり、自由意思で帰るなら素晴らしいことだ。だが、世界の多くの紛争でそれは実現していない。もし「紛争の先行きが見通せないため、まず特定活動の在留資格でその先も約束せずに様子を見よう」ということなら、それはあってはならないことだ。

 ウクライナの避難民が中長期的に日本で暮らすためには、衣食住や医療の支援だけでなく、日本語教育や就労支援も充実させる必要がある。高齢者だったり、子供がいる家庭だったり、多様なニーズに入国直後から対応する必要がある。何が自治体の役割で、何が政府の役割かの明確化も求められる。

■1%切る難民認定 違いどこに

 多くの人に一緒に考えてもらいたいことがある。ウクライナからの避難民は積極的に受け入れて、なぜ他の国や地域から逃れた難民の多くは受け入れられないのだろうか。

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