PR |
|
---|---|
PR |
<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑨>前例なき国家間「140字の戦争」 情報戦、真相見極める目を 専修大教授 武田徹氏
<たけだ・とおる>1958年、東京都出身。国際基督教大院修了。東大先端科学技術研究センター特任教授などを経て現職。専門はメディア論、ジャーナリズム論など。著書に「戦争報道」など。63歳。
■大統領が「自撮り」発信
ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナのゼレンスキー大統領ら国家の要人、当局が、ツイッターなど交流サイト(SNS)を使って戦況や公式発表を伝えたり、地元住民がSNSで現地の被害状況を発信したりすることが初めて大規模に行われた戦争だ。
SNSは約10年前、中東や北アフリカで起こった民主化運動「アラブの春」で使われたが、国家自体を含めて、これほど活用されたことはない。ウクライナが国際的なメディアを持たないことも影響しているが、SNSを使った情報戦、(ツイートの文字数制限から)「140字の戦争」の様相を呈している。
情報戦という言葉は古くからあった。本格化したのは国家が総力戦で戦わざるを得なくなった第1次世界大戦以降だ。国民の戦意を高揚しなければ、戦争を続けられないためだ。敵側の情報をかく乱する意図もあった。ゼレンスキー氏が首都キーウ(キエフ)の街中で自撮りをしたのは、ロシア側の「ゼレンスキー氏がキーウから逃亡した」というプロパガンダ(政治宣伝)の打ち消しや、ウクライナの国内世論を喚起する効果があった。キーウ近郊ブチャでの住民大量虐殺もSNSを使って全世界に発信され、ロシアが悪で、自分たちが正義だと印象づけた。ロシアの残虐な行為は本当にひどいものだと感じる。ウクライナの積極的な情報戦は功を奏している。
一方で気になるのは、ロシア側の情報がロシア政府の発表以外、ほとんど出てこないことだ。
【関連記事】
<シリーズ評論・ウクライナ侵攻 バックナンバー>
⇒プーチン氏、真の狙いは「欧州安保再編」 畔蒜泰助氏
⇒日本の防衛資源配分 悩ましい優先順位 兵頭慎治氏
⇒石油・ガス「脱ロシア」の衝撃 田畑伸一郎氏
⇒NATO・西側諸国の足元を見たロシア 鶴岡路人氏
⇒対ロ姿勢転換、距離置く中国 興梠一郎氏
⇒核リスク上昇、危うきシナリオ 戸崎洋史氏
⇒経済制裁 ロシアに打撃 木内登英氏
⇒弱る米国、描けぬ戦後秩序 中山俊宏氏
⇒国際規範崩す「19世紀型戦争」 細谷雄一氏
⇒自らの手を縛る軍事作戦 小泉悠氏
⇒避難民、一生引き受ける覚悟を 石川えり氏
⇒「スラブ民族統合」へ軍事介入 藤森信吉氏
⇒対ロ世論に「3つのバイアス」 宇山智彦氏
⇒漁業交渉、日ロつなぐ「強い糸」 浜田武士氏
⇒経済制裁、省エネが最も有効 高橋洋氏