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医療事故の被害者支え30年 道内弁護士有志の研究会 相談累計2300件、チーム制で原因究明

 道内の弁護士有志でつくる札幌医療事故問題研究会(木下尊氏(たかし)代表)が今年、発足30周年を迎えた。「医療ミスがあるのでは」「病院の治療に納得がいかない」など、この間受けた無料相談は2300件を超える。医療訴訟が患者側にとって「冬の時代」と言われる中、同研究会は事例研究や道外関連団体との連携に力を入れ、事故の原因究明や被害者救済に努めている。(町田誠)

 札幌市白石区の30代の会社員女性は2年前、勤務中に突然、倒れるほどの痛みを腹部に感じた。子宮外妊娠だった。女性は妊娠判明後、出血が続き、通っていた産婦人科に異常を訴えていたが、原因不明とされていた。

 転院し手術を受けた。もともと通っていた病院からは、「見落とした」との説明や謝罪はなかった。「頻繁に医師にみてもらっていたのに、異常を発見できないものなのか。変だなとの思いが残りました」。ネットで検索して同研究会を知り、電話で相談。弁護士2人と会って、示談交渉を有料で依頼した。「慰謝料どうこうより、自分が納得するためにお願いした」と振り返る。

 交渉で病院側は慰謝料の支払いを拒否。研究会が協力を依頼した道外の医師から、画像診断の問題点や、適切な検査がなされていないとの意見が示され、民事調停を申し立てた。最終的に、病院側が解決金を支払う形で調停が成立した。女性は「泣き寝入りせず研究会に連絡して良かった。弁護士に話を聞いてもらうだけでも、精神的に助かると思う」。

■訴訟は冬の時代

 1992年に設立された同研究会は、札幌弁護士会の上田文雄さん(前札幌市長)が初代代表。その2年前に発足した名古屋市の「医療事故情報センター」を参考にした。現在、弁護士でつくる同様の30団体が同センターとつながっており、道内は同研究会だけだ。

 これまでの相談のうち、病院側の責任追及が可能と判断して示談交渉や裁判を行ったケースは10~20%。そのうち70%で、病院側に損害賠償などの責任があると認められた。

 最高裁判所の統計によると、全国の地方裁判所の医事関係訴訟で、原告(主に患者側)の請求が通った率は2000~07年は40%前後あったが、10年以降は20%前後で推移している。患者にとって不利な「冬の時代」とされるゆえんだ。

 そんな状況下、裁判官に患者側の主張を認めてもらうには、本や論文だけでなく医師の意見書が必要だという。木下代表(札幌弁護士会)は「自分の名前を出して病院側に不利な意見を書いてくれる医師は少ない。特に道内の病院が相手の訴訟では、協力してくれる医師を道内で探すのは難しい」と明かす。

■道外団体と連携

 そこで同研究会は、名古屋のセンターとそのネットワークを通じて、道外の協力医をあっせんしてもらっている。医療訴訟に関する研修会を年5回開き、医師の講義も受けている。

 そもそも医療訴訟は「一般的な訴訟と比べ、3倍以上の時間がかかる」と、事務局長の大崎康二さん(札幌弁護士会)。同研究会では札幌や釧路、旭川の弁護士会に所属する48人と1法人が七つの班に分かれ、無作為に振り分けられた相談に応じている。相談者とは、班の弁護士2人以上で対応し、医療事故の分析や訴訟の勝算などは班員全員で話し合って結論を出す。

 こうした手厚いチーム制を敷く背景について木下代表は「医療分野は専門的で、病院側から『問題ない』と言われると、それを裁判所が過度に重んじる傾向もある。患者側弁護士にもハードルは高く、医療用語やカルテ、検査値の読み方といった研さんが不可欠」と説明する。

 研究会のメンバーの平均年齢は50歳を超え、若手育成が課題だ。木下代表は「医療訴訟の件数は少なく、多くの訴訟を経験することは難しい。班の垣根を超えて若手が訴訟に参加できるよう工夫したい」という。

 札幌医療事故問題研究会への相談は同研究会のホームページまたは(電)011・209・3331へ。

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