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<デジタル発>一撃で肋骨6本、140針 東区ヒグマ襲撃被害の男性が体験した恐怖

 ヒグマが出勤途中の男性の背後から駆け寄り、不意打ちで右前足を背中に振り下ろし、男性が地面にたたきつけられるようにうつぶせに倒れると、腕などに何度もかみつく―。昨年6月18日朝、札幌市東区の住宅街で起きたこの場面の動画を見て、衝撃を受けた人は多いのではないでしょうか。男性は最初の一撃で肋骨(ろっこつ)6本を折ったほか、全身を140針縫い、このヒグマに襲われた市民4人の中で最も大きなけがを負いました。今年1月に7カ月ぶりに職場復帰を果たした男性と3月下旬、現場を訪れ、市民を震撼(しんかん)させたクマ襲撃の一部始終を振り返ってもらいました。(内山岳志)

■「夜は同じ道を通れない」

 「右腕をかまれている最中に目が合い、ヒグマに襲われていると認識した」。大けがをしたのは干物製造販売の「ふじと屋」(札幌市東区)に勤務する会社員安藤伸一郎さん(44)。当時はあまりにとっさのことで恐怖は感じなかったが、痛みなどの後遺症が残る今は「昼間は大丈夫だけど、夜は怖くて同じ道を通れない」と話す。


おことわり ヒグマが男性に何度もかみついたりする様子が動画に写っていますが、重要な記録と考え、本人や撮影者の同意を得て掲載します。

■当別方面から東区の住宅街へ

 安藤さんの証言を詳述する前に、まずは住宅街で4人がヒグマに襲われる前代未聞の「襲撃事件」の経緯をおさらいしたい。

 調査に当たった道立総合研究機構(道総研)によると、ヒグマは札幌の北に位置する増毛山地から、石狩管内当別町を経由して石狩川を渡り、伏籠(ふしこ)川沿いや水路を通って札幌市東区の住宅街に到達したとみられる。クマが姿を隠しやすい防風林などをつたって南下してきたもようで、5月29日には石狩川と茨戸川が接する北区の波連(はれ)湖付近で目撃された。6月1日と16日には近くでふんや足跡も見つかっており、ふんからフナなどの川魚を食べて過ごしていたことが分かっている。


 4人が襲撃された昨年6月18日に最初の目撃情報があったのは午前2時15分、北区上篠路の水路近くで、通行人が「クマが南に歩いていった」と110番した。南下したクマは東区に進入し、同3時12分、丘珠空港南側にある介護老人保健施設の防犯カメラに写り込み、同28分には北31東19の住宅街の路上で再び通行人に目撃された。

札幌市東区の介護老人保健施設の防犯カメラに写ったヒグマ(施設提供)
札幌市東区の介護老人保健施設の防犯カメラに写ったヒグマ(施設提供)

■143年ぶりの襲撃

 さらに南下したクマは同5時55分に北19東16、同6時15分に北20東16の路上で、それぞれごみ捨てに出た70代男性と80代女性に襲いかかり、腰や背中にひっかき傷の軽傷を負わせた。その後は北上して7時18分、北33東16の路上で、通勤途中の安藤さんを襲撃した。再び丘珠空港近くに戻って陸上自衛隊丘珠駐屯地の正門で警備に当たっていた40代の男性自衛官の脇腹に軽傷を負わせた。東区で人がクマに襲われたのは1878年(明治11年)以来143年ぶりのことだった。

札幌市東区の住宅街を歩くヒグマ(中川明紀撮影)
札幌市東区の住宅街を歩くヒグマ(中川明紀撮影)


 ヒグマはその後、同駐屯地を西から東に横切り、駐屯地東側の茂みに逃げ込んだが、同11時16分、道警から依頼を受けた北海道猟友会札幌支部のハンターに駆除された。体長約1・6メートル、体重約160キロの雄で、満4歳の亜成獣だった。

■体重160キロが体当たり

 ここまでがヒグマ出没の一連の経緯だが、最も大きなけがを負わされた安藤さんに現地で当時の状況を再現してもらうと、話を聞いている方も改めて背筋が寒くなった。

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