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<シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑤>対ロ姿勢転換、距離置く中国 政府要人「プーチン氏と手切るべき」 神田外語大教授 興梠一郎氏


 <こうろぎ・いちろう>1959年、大分県出身。九州大卒業後、三菱商事中国チームを経て、カリフォルニア大バークレー校、東京外大大学院修士課程修了。外務省の専門調査員(香港総領事館)、専門分析員などを歴任し、06年から現職。専門は現代中国論。

◇ ◆ ◇


 ロシアのウクライナ侵攻に対する中国の姿勢は、当初の全面支持路線から距離を置く方向へと変化している。中国は軍事、政治面ではロシアを切り捨てるわけにいかないが、経済面では欧米との取引が大きい事情がある。中国体制派の発言を拾うと、良く分かる。

 3月中旬、中国の中央政府にあたる国務院の顧問を務める胡偉氏が、「中国は今すぐプーチン大統領と手を切るべきだ」と主張する論文をインターネット上に投稿し、衝撃が広がった。論文では、「戦争拡大の代償は高くつく」とし、「(ロシアの)軍事活動は取り返しのつかない過ちだった」と主張した。すぐ閲覧できない状態になったが、注目すべきは、政府の肩書を隠すことなく、「どこまでプーチン氏を支持するか」という意見が上がっていることだ。

 最近でも、中国の秦剛駐米大使がメディアへのインタビューで、ロシアとの関係について「許容できる限度はある」と発言した。中国政府系シンクタンクの研究員・肖斌氏も、胡偉氏とは違う表現で「ロシアとはある程度距離を取った方が良い」と発信している。

 国際社会で対ロ非難が強まる中、中国がロシアと結託しているとの見方を打ち消す狙いだろう。3月に入って中国内の株価が暴落し、経済的なデメリットが見え始めたことが、潮目を変えたと思う。経済と安全保障は連動してるということが身にしみたのだろう。

■中国経済「三重苦」に

 今年後半の中国共産党大会で政権3期目につなげたい習近平国家主席にとっては、求心力低下につながる経済的な打撃は何としても避けたい。元々、新型コロナウイルスで経済が失速し、格差是正のため掲げた「共同富裕」も「富裕層の締め上げにつながっている」との不満が渦巻いていた。

 民間企業を統制し、不動産開発大手・中国恒大集団の経営危機など、市場も冷え込んでいる。そこにウクライナ侵攻が加わり、中国にとっては「三重苦」だ。中国国家統計局が公表した昨年の第4四半期(10~12月)のGDP(国内総生産)成長率はがくっと下がった。4月中旬にも公表される予定の今年の第1四半期(1~3月)のGDP成長率も、相当悪い結果が予想される。

■習氏とプーチン氏、思惑交錯

 中国がロシアを必要とした背景には、米国への対抗意識がある。

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