PR
PR

<シリーズ評論・ウクライナ侵攻③>石油・ガス「脱ロシア」の衝撃 資源マネー激減で財政打撃 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授 田畑伸一郎氏


 <たばた・しんいちろう>1957年、静岡県出身。東大卒。一橋大大学院修士課程修了、同博士後期課程単位取得退学。スラブ研究センター(現スラブ・ユーラシア研究センター)助教授を経て現職。専門はロシア経済。64歳。

◇ ◆ ◇


 ロシアのウクライナ侵攻が長期化の様相を見せる中、欧米は強力な経済制裁を打ち出した。ロシアの財政収入と経済成長を支えてきた石油・天然ガスの輸入制限だ。

 3月上旬に米国がロシア産の原油、天然ガス、石炭の輸入を即日禁止し、英国も年末までに原油輸入の停止を決めた。さらに欧州連合(EU)欧州委員会も、今後数年をかけてロシア産化石燃料への依存から脱する計画を公表した。EUは禁輸措置を取らないものの、年末までにロシア産ガスの輸入を3分の1に削減する。欧米が化石燃料の「脱ロシア」を立て続けに表明したのは、それがエネルギー資源大国であるロシアに対する最も有効な制裁であるからだ。

■日米欧「輸入ゼロ」なら影響甚大

 石油・天然ガスの輸入制限がロシアの財政収入や経済成長に与える影響を試算した。ロシアの輸出量のうち原油で60%、ガスでは74%を占める米国、カナダ、EU、英国、日本などの国々が輸入量を2020年比で約3割減らした場合、ロシアの今年の経済成長率を1・6%押し下げ、石油・ガス収入が19%減る。輸入量がゼロになれば、経済成長率を4・5%押し下げ、石油・ガス収入は54%も減る。これは相当な影響だ。

 ロシアの国家財政は健全だった。石油・天然ガスの輸出で得る収入が歳入の4割を占め、その一部が「国民福祉基金」という政府系ファンドに積み立てられている。今年初めの時点で、基金の残高は約1826億ドル(約22兆2700億円)あり、財政赤字になれば、この基金で穴埋めする仕組みになっている。

 財政赤字だった年の赤字額は国内総生産(GDP)比3~5%程度で、今年初めの国債残高は同12%程度といずれも低い。石油と天然ガスで稼ぐロシアは、政府、民間ともに借金の少ない国である。

残り:1618文字 全文:2806文字
続きはログインするとお読みいただけます。

【関連記事】
<シリーズ評論・ウクライナ侵攻 バックナンバー>
プーチン氏、真の狙いは「欧州安保再編」 畔蒜泰助氏
日本の防衛資源配分 悩ましい優先順位 兵頭慎治氏
NATO・西側諸国の足元を見たロシア 鶴岡路人氏
対ロ姿勢転換、距離置く中国 興梠一郎氏
核リスク上昇、危うきシナリオ 戸崎洋史氏
経済制裁 ロシアに打撃 木内登英氏
弱る米国、描けぬ戦後秩序 中山俊宏氏
前例なき国家間「140字の戦争」 武田徹氏
国際規範崩す「19世紀型戦争」 細谷雄一氏
自らの手を縛る軍事作戦 小泉悠氏
避難民、一生引き受ける覚悟を 石川えり氏
「スラブ民族統合」へ軍事介入 藤森信吉氏
対ロ世論に「3つのバイアス」 宇山智彦氏
漁業交渉、日ロつなぐ「強い糸」 浜田武士氏
経済制裁、省エネが最も有効 高橋洋氏

北海道のニュースがメールで届く
PR
ページの先頭へ戻る