PR
PR
暮らしと法律

「会社を存続させるため、終結の方法を知る」 コロナ禍の中小企業・個人事業経営のコツ

by iStock
by iStock


 新型コロナウイルス禍が長期化し、中小企業や個人事業主の業績回復が課題となっています。政府や民間の資金繰り支援で、倒産の急増は抑えられましたが、収益が改善できなければ今後の返済が難しくなる恐れがあります。これから経営者はどう向き合えばいいのか。道内の企業経営の実態に詳しい札幌弁護士会所属の後藤雄則(たけのり)弁護士に聞きました。(聞き手・林真樹)

 ――コロナの影響で企業からの相談件数は増えましたか。

■倒産件数はコロナ前より減少

 ウイルスが拡大し始めた2020年春ごろは、「事業存続が困難になった」という相談が、飲食関係を中心に何件かありました。その後は実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などの手厚い支援策によって、次第に少なくなりました。倒産件数もコロナ前より減っています。

 ――資金繰り対策以外に、倒産が少ない理由はありますか。

 法的手段のうち「民事再生」は、支援してくれる親会社やスポンサー企業がいなければ、うまくいかない場合が多いです。再生となると信用が低下するため事業を続けながら弁済をしていくことは難しく、そもそも件数が増えていないと思います。「破産」は、裁判所に納める破産のための費用が一定額必要です。運転資金が枯渇するギリギリまで経営する中小の事業者も多く、破産の費用が残っていないため、破産を選択することが難しいという事例も目立ちます。

 ――今後の企業経営の課題は何でしょうか。

■返済開始後が大変か

 むしろ、ゼロゼロ融資の返済が始まってからの方が大変ではないかと思います。受けた融資が底を突きかけているという話も、ちらほら聞くようになりました。さらに、昨今の原油高も不安材料です。影響を受けるのは運送業にとどまらず、原材料の値段も上がるため、幅広い業種に波及する恐れがあります。

 ――経営が行き詰まった際、「事業譲渡」という選択肢もありますね。

 はい。会社の事業価値を会計士などが評価し、負債以上の価値があると判断して買うところが出てくれば、必要な利害関係者との調整を行った上で譲渡されます。ただ、その会社にしかないノウハウがあっても、赤字額が大きいなど、なかなか事業譲渡には結びつきません。さらに、価値が折り合うかどうかの問題に加え、創業者の人的結びつきが会社の内外で強い場合などは、自分の会社を売ることに否定的なケースもあります。

 ――一方で休業や廃業など「会社をたたむ」件数の割合は増えています。注意点はありますか。

■早めの対応が大切

 事業を進めると、たくさんの利害関係者を持つことになります。取引先、従業員、その事業のファン、そして事業主ご本人と家族など。多くの方々への影響を最小限に抑えるためにも、予期せぬアクシデントで継続が難しくなりそうになった場合、早めに対応を考えておくことが大切です。経営状況が悪い時にこそ融資詐欺などにも引っかかりやすくなります。弁護士業務で継続的に接する顧問先以外でお会いする事業者の中には、どうしてもご自身で問題を抱え込んでしまい、かなり悪化した状態で相談に来られる方々が多いです。

by iStock
by iStock


 ――相談窓口を具体的に教えてください。

 法律面で知りたいことがあれば弁護士や司法書士、会計のことであれば会計士、税理士です。経営面のことであれば、中小企業診断士という専門家もいます。今なら事業譲渡を専門に扱う会社もありますので、早めに相談することも有益かと思います。また金融機関も、企業を支えようという強い考えを持っており、メインバンクへの事前の相談も一つの方法ではないでしょうか。 

 ――苦しい中でも事業を続けていくためのヒントはありますか。

■第三者の視点で新発見も

 「会社を存続させるため、終結の方法を知る」というのは一見矛盾があるかもしれませんが、終結する方法を知れば、それを避けるにはどうしたら良いかということを早めに考えることもできると思います。一つの例えですが、病気への向き合い方と似ているかもしれません。病気の原因を早めに発見できれば、治療方法の選択肢が大きく増えることにつながります。実際には事業を終わらせないにしても、シミュレーションをしておく価値はあると思います。

 ――経営を客観視することが大切なのですね。

 事業主の方は、非常に大きなプレッシャーの中で、日々経営されていると思います。それだけに、事業の価値や意味は、会社を経営するご自身が一番分かっているのかもしれません。ただ、第三者の視点を入れることで、新たな発見があるのも事実です。日頃から、自らの会社、事業の状況を理解してもらえる外部の方を持つことも一つの方法かと思います。

 ――残念ながら事業継続を断念せざるを得なくなるケースもあります。

 誠実に事業をしていたかどうかが、終結する上でとても大事な要素になると思います。債権者が「社長も頑張ったんだから仕方ないな」と感じるのか、「だまされた」と感じるのか。事業を終える際、利害関係者との間で生まれる雰囲気というのは、普段からの経営姿勢が表面化したものではないでしょうか。経営に向き合う日頃の誠実な態度は、そういう意味で大切だと思います。

 <後藤雄則(ごとう・たけのり)弁護士> 1976年、釧路市生まれ。札幌南高卒。同志社大学法学部を卒業。会社勤務を経て、2007年に弁護士登録。10年に札幌フロンティア法律事務所を開設。趣味は将棋。国内外のあらゆる推理小説を読破したほどのミステリー好き。かつてプロ野球のロッテオリオンズが釧路市内で公式戦を行っていた縁で、今も千葉ロッテマリーンズのファン。北海道日本ハムファイターズとの対戦時は、どちらを応援するか悩むという。

PR
ページの先頭へ戻る