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<みなぶん #311jp>福島民報記事 原発事故から11年 険しい廃炉への道 デブリの位置、量は不明

 全国のブロック・地方紙17社が2月に無料通信アプリ「LINE」(ライン)や紙面で行ったアンケートで、福島について関心がある項目を質問したところ、最も多かったのが「原発事故の廃炉作業」だった。福島民報が廃炉作業を取材した。

 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)は2011年3月11日の東日本大震災の地震と津波で原子炉を冷やせなくなり、全6基のうち1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起き、1、3、4号機は水素爆発した。大量の放射性物質が放出された類例のない原発事故から丸11年を迎える今も、溶け落ちた核燃料(デブリ)がどこに、どれぐらいあるのか詳細には分かっておらず、廃炉の道のりは険しいままだ。

廃炉に向けた作業が進む東京電力福島第1原発の(左から)1号機、2号機、3号機=2月25日撮影
廃炉に向けた作業が進む東京電力福島第1原発の(左から)1号機、2号機、3号機=2月25日撮影


 政府と東電は、冷温停止状態となった2011年12月から30~40年での廃炉完了を目標に掲げているが、最難関となるデブリの取り出しが計画通りに進む見通しは立っていない。デブリは制御棒などの金属、原子炉格納容器のコンクリートなどと混ざり合って固まっているとみられ、その総量は1、3号機で計約880トンとの推計があるが、詳しい性状や分布状況などの全貌はつかめていない。


 デブリは極めて強い放射線を出すため、人は近づけない。調査や取り出しは遠隔操作のロボットを使うしかないが、機器開発の遅れやトラブルなどで作業工程の遅れが相次いでいる。30~40年で完全にデブリを取り出すのは困難との見方もある。

東京電力福島第1原発から発生する汚染水から放射性物質を取り除くALPS=2月25日撮影
東京電力福島第1原発から発生する汚染水から放射性物質を取り除くALPS=2月25日撮影


 東電は早ければ今秋、2号機で初のデブリ取り出しを計画している。最初は試験的に数グラムを取り出し、次第に量を増やす方針だ。デブリの取り出しは、廃炉工程表「中長期ロードマップ」で最終段階の入り口に位置付けられる。2号機はロボットによる内部の調査が始まったものの、1、3号機では取り出しのめどが立っていない。デブリをどこで、どう処分するか方針も定まってはいない。技術的助言をする原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の山名元(やまな・はじむ)理事長は「デブリを取り出す工法によって発生量が異なる。原子炉内の把握と試験的な取り出しを終えるには数年かかる」としている。

東京電力福島第1原発の敷地に立ち並ぶ処理水の貯蔵タンク=2月25日撮影
東京電力福島第1原発の敷地に立ち並ぶ処理水の貯蔵タンク=2月25日撮影


 デブリは今も水をかけて冷やしており、デブリなどに触れることで放射性物質を含んだ「汚染水」が増え続けている。多核種除去設備(ALPS)でほとんどの放射性物質を除去し、「処理水」として原発敷地内の大型タンクで保管している。政府は敷地の逼迫(ひっぱく)がデブリ取り出しなど廃炉作業の妨げになるとして、2023年春ごろから福島第1原発の沖合約1キロで放射性物質トリチウムを含んだ処理水を放出する方針だ。30~40年後の廃炉完了までに放出を終える予定だが、福島県内では漁業者を中心にあらゆる産業、市町村議会などから新たな風評発生への懸念や慎重な対応を求める声が上がっている。

 放射性物質トリチウムを含んだ処理水=東京電力福島第1原発で発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化した水。ALPSで62種類の放射性物質のほとんどが取り除かれるが、水と性質が似ているトリチウムは除去できずに残る。トリチウムは自然界に存在するほか、原子炉内の核分裂などによっても生じる。通常の原発では希釈した上で海に放出している。政府は昨年4月、国内で処分の実績があり、トリチウム濃度の検知が確実だと判断して海洋放出を決定した。トリチウム濃度を国の放出基準値の40分の1未満まで水で薄め、原発の沖合約1キロ先で海底トンネルを通じて放出する。新たな風評被害は東電に損害賠償させるとしている。

■福島民報社報道部・県政キャップ 斎藤直幸

 福島県内59市町村議会のうち75%に当たる44議会が処理水の海洋放出への反対や方針撤回、慎重対応を求める意見書を可決している。にもかかわらず、東京電力は昨年12月、海洋放出に向けた実施計画の審査を原子力規制委員会に申請した。地元との合意形成を欠いたまま放出に突き進む動きだとして懸念の声が出ている。

 議論の先送りも続いている。廃炉の定義が定まっておらず、廃炉完了後のエンドステート(最終的な状態)を描けていない課題がある。除染作業でかき集めた放射性物質を含んだ土壌は、2045年までに中間貯蔵施設から搬出し県外で最終処分すると法律で定められているが、受け入れ先の選定は始まってもいない。

 政府、東電は合意形成不全、先送り症にむしばまれてはいないか。議論にふたをして、福島第1原発をなし崩し的に最終処分場にしてはならない。


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