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<中森明夫の銭湯的メッセージ>北海道は沈没しない

 2022年が始まった。昨年来、見たドラマで“強烈”に印象に残ったのは『日本沈没―希望のひと―』である。なんとラストで北海道と九州が沈没しないんですよ!? 原作と異なる結末にネット上では「日本沈没じゃないじゃん!」「ひどい、詐欺だ。北海道や九州は日本やないんかい?」などと大ブーイングの嵐だった。このドラマの脚本家が北海道出身なので、「郷土愛で故郷を沈没させなかったのでは?」とやゆされている。

 さて、小松左京の原作小説は1973年刊の大ベストセラーだ。同年に映画化、翌74年にはドラマ化されている。このドラマを見て、当時14歳の私は強いショックを受けた。ヒロイン役の由美かおるがセクシーすぎる! 村野武範との濃厚なラブシーンは中学生には刺激が強すぎた。この奔放な財閥令嬢・阿部玲子役を、映画ではいしだあゆみがやっていた。原作でも思いっきりセクシュアルに描かれていて、『日本沈没』の隠れたセールスポイントだったはずだ。

 ところが、なんと今回のドラマ版では、その役自体がないんですよ! うーむ、ご時世だろうか。一応、杏(あん)が好演する女性記者がヒロイン的に活躍するが、主役の小栗旬との濃厚なラブシーンはない。2006年の映画版でも原作の設定は改変されていたが、主役の小野寺俊夫(草彅剛)や阿部玲子(柴咲コウ)は出ていた。が、今回のドラマ版は主要キャストがまるっきり違う。内容も含めてまったく別物と言ってよい。

 主役の天海啓示(小栗)や常盤紘一(松山ケンイチ)は若手官僚であり、やたら会議シーンばかり出てくる。どうやら映画『シン・ゴジラ』を意識して『シン・日本沈没』をやろうとしていたようだが、時折、挿入されるホラン千秋の棒読みのナレーションがゴジラ顔負けの破壊力でドラマを壊滅させる。田所博士役の香川照之が珍妙な髪形の扮装(ふんそう)で奇声を上げ、そこはTBS系<日曜劇場>枠といえば『半沢直樹』臭が猛烈に漂い、思いっきり目をむいた香川お得意の“顔芸”で視聴率の“倍返し”をむさぼろうとする。

 最終回には突如、謎の感染症が世界中に広がり、コロナ禍を意識したんだか、小松の『復活の日』が混じり込んだんだか知らないが、ドタバタと本州・四国はこのドラマの説得力とともにあえなく沈没した。しかし、北海道は沈没しない。日本政府は既に札幌に移転していた。「そうだ、新生ニッポンは北海道から始まる!」という、このドラマの結末を道民の皆さんは、どう思われているだろう?(作家、アイドル評論家)

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