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<デジタル発>「クマ担」記者が見た2021年の北海道 札幌中心部にも出没の理由は?

札幌市東区の住宅街を歩くヒグマ=6月18日午前7時55分(中川明紀撮影)
札幌市東区の住宅街を歩くヒグマ=6月18日午前7時55分(中川明紀撮影)


 2021年の北海道は、ヒグマに人が襲われる事故が相次ぎ、狩猟中の男性など4人が死亡、8人が重軽傷を負った。死傷者が12人に達したのは1962年度の統計開始以来、初めてのこと。札幌市東区の住宅街のど真ん中にクマが出没し、男女4人を次々に襲う「異常事態」が発生したほか、山の中ではなく、農作業中の人が被害に遭うケースも相次いだ。なぜクマによる被害は増えたのか。有効な再発防止策はあるのか。「クマ目線」で現場を歩いてきたクマ問題担当(クマ担)記者が、今年のクマ被害を振り返った。(報道センター 内山岳志)

■「やられた!」 143年ぶりの被害

 「東区にクマが出て大騒ぎになっている。すぐ出社して」。6月18日早朝、札幌本社報道センターからの電話でたたき起こされた記者は耳を疑った。「東区だって? 記憶にある限り、少なくともこの数十年、東区にクマが出たという話は聞いたことがない」。記者はちょうど前日、住民による草刈りや放棄された果樹を伐採する活動が進んだ結果、人里に出没するヒグマが減ったという記事を出稿したばかり。あまりのタイミングの悪さに「やられた」という思いを胸に、慌てて会社に向かった。

 最初にヒグマの目撃通報があったのは午前3時28分。東区北31東19の路上で、通行人から「クマが歩いている」と110番があった。クマはいったん南下し、北に戻りながらごみ捨てに出た高齢者や通勤中の会社員を次々に襲撃。陸上自衛隊丘珠駐屯地への侵入を防ごうと、駐屯地の正門を閉めようとした自衛隊員までなぎ倒した。クマは最初の目撃から約8時間後の午前11時16分、丘珠空港北東の茂みでハンターに駆除されたが、市内は一時騒然となった。クマは体長約1・6メートル、体重約160キロの雄で、5~6歳と推定された。


 札幌市東区の人口は約26万5千人で、東京の港区や渋谷区よりも多い。北部には特産のタマネギ畑が広がっているが、クマが最初に目撃されたのは札幌と小樽を結ぶ高速道路「札樽自動車道」のすぐ近くだ。確認すると、東区で人がクマに襲われたのは、1878年(明治11年)に当時の丘珠村(現在の東区丘珠町)などでクマが開拓民の夫婦らを襲い、死者3人、重傷者2人を出した「札幌丘珠事件」以来、143年ぶりのことだった。

■クマの足取りを調査

 クマはいったい、どこからやって来たのか―。クマ出没から約2週間後の6月末、クマの足取りを自転車でたどってみることにした。時間は、最初の110番があった午前3時28分。現場に着くと、周囲はうっすらとは明るいが、人影はなく、車通りも少ない。近くのラーメン店では午前5時の開店に向けた準備が始まっていたが、もし物陰にクマが潜んでいたとしたら、すぐには気づけないだろうな、と思った。

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