PR
PR

<奈井江 進撃のモンスターウルフ>上 食害防止 全国で雄たけび

 デントコーンなど、牛の飼料を栽培する北見市西相内(あいのない)の畑に、いかつい風貌の「オオカミ」が姿を現したのは8月のことだ。全長1・2メートル。首を左右に振りながら、時折「ウオオーン」とうなり声を上げ、両目から赤い光を放つ。

■出荷100台突破

 畑では昨年、コーンがクマに食い荒らされる被害が発生したが、オオカミの登場以降は起きていない。「クマの足跡を見なくなったんだ」。畑を所有する酪農家大橋吉隆さん(72)は、頼もしげにオオカミを見つめた。

 この正体は、クマやシカなどによる農作物の被害を防ぐ野生動物忌避装置「モンスターウルフ」。動物が近づくと赤外線センサーで反応し、目などに取り付けられた発光ダイオード(LED)を点滅、人の声やオオカミの鳴き声など70種類以上の音声を90デシベルで発して追い払う。

 空知管内奈井江町の機械部品製造「太田精器」が開発し、2018年に発売した。設置費含め1台55万~60万円だが、評判が広がり4年目の今年、累計出荷台数100台を突破した。

 北見市などでつくる北見市鳥獣被害防止対策協議会も本年度、ウルフの評判を聞き、実証実験を始めた。2台を導入して大橋さんら市内農家の畑に設置し、効果を検証中だ。市内では昨年度、野生動物による農業被害が約8800万円に達した。市は「効果が期待でき、農家も歓迎している」と、被害低減に向け来年度も実験を続ける。

■設置後は激減

 ウルフの出荷先の半数は、シカやクマ対策に悩む道内。残りはイノシシなどの被害に苦しむ道外で活躍している。

 沖縄県の石垣島でパイナップルを生産する「やえやまファーム」は19年7月、3ヘクタールの畑に設置した。同年は果実約500個がイノシシの食害に遭ったが、設置後、被害は激減。今年はほぼゼロになったという。

 同ファームの菊地数晃取締役(52)は「イノシシの習性を調べる大学の先生はいたけど、被害防止に向き合うメーカーは太田精器くらいしかなかった。本当に助かっている」と話す。

 ウルフの効果は食害対策にとどまらない。群馬県の養豚会社は今年、「家畜に豚熱(CSF)を感染させるイノシシ対策に活用したい」と計5台を導入した。

 野生動物被害の切実な声に応える一方、ウルフは見た目から「子供だまし」とインターネットに書き込まれたこともあった。だが太田精器の太田裕治社長(63)は「設置すれば被害は減る。『効果がない』と、返却されたことは一度もない」と胸を張る。(滝川支局の藤原那奈が担当し、3回連載します)

【関連記事】
<奈井江 進撃のモンスターウルフ>中 驚きの容姿 遊び心で誕生
<奈井江 進撃のモンスターウルフ>下 自走式に挑戦 進化は続く

北海道のニュースがメールで届く
PR
ページの先頭へ戻る