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<書評>障害をしゃべろう! 上・下

里見喜久夫編

たのもしい「生きよう」とする力
評 辻山良雄(書店店主)

 みなさんは「コトノネ」という雑誌をご存じだろうか。雑誌のページを開くと、毎号障害者が楽しそうに、いきいきと働く姿がリポートされる。読めば、こちらが勝手に抱いていた先入観が簡単に崩され、愉快でおおらかな気持ちにさせられるのだ。

 本書はその「コトノネ」内の人気企画、「ぶっちゃけインタビュー」を書籍化している。伊藤亜紗、森田真生、藤原辰史など、今をときめく各界の専門家32人が登場するが、障害とつかず離れず、毎回雑談のようにしゃべるあいだに、ゲストの新鮮な生(なま)の言葉が引き出される。まじめな顔して読むよりも(もちろんそれでもOKですが)、好奇心たっぷりに知らない世界を覗きこむといった気分が、この本には合うだろう。

 本書には、全編「生きよう」とする力がみなぎっている。それはインタビューする里見喜久夫編集長の、「この世界をもっと知りたい、教えてほしい」というまっすぐな意志と無縁ではない。そもそも「コトノネ」は東日本大震災をきっかけに、「新しい社会の当事者のひとりになりたい」と願った里見さんにより立ち上げられた雑誌なのだ。なりたいというからには、それまでは当事者ではなかったのかもしれない。自分の〈生〉を生きているようで、いつの間にか、自らの当事者であることから締め出されてしまう現代人。そんな寂しさに、里見さんもまたとらわれていたのかもしれない。

 しかし本書はそんな寂しさとは無縁。自分の足で立ち、〈わたし〉の声を発している人たちの、何とたのもしいことか。それはこの世界を覆いはじめている優生思想とはまったく逆にある。例えば重度障害者の娘を授かった最首(さいしゅ)悟さんは、その娘である星子さんに頼っている。「どちらが頼っているのか、どちらも頼っている」。「弱いロボット」の制作者・岡田美智男さんの言葉を借りれば、「弱さが取り持つ縁」。かたくなに見えたこの世界が、次第にひらかれたものとなる。

 自らの当事者になりたければ、まずは他者と「しゃべる」ことだ。ひたすら人間臭く、にぎやかな声に誘われた本だった。(青土社 各1980円)

<略歴>
さとみ・きくお 1948年生まれ。株式会社ランドマークなどの代表取締役。2012年、季刊「コトノネ」を創刊、発行人・編集長を務める

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