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TPP3年、苦境の畜産 道内肉牛生産者、コロナ禍で輸出を断念

 環太平洋連携協定(TPP)が2018年12月の発効からまもなく3年となる中、道内の畜産農家が苦境に立たされている。政府は「攻めの農業」を掲げ、農産物の輸出拡大に取り組んできたが、コロナ禍の需要低迷や関税手続きなどの壁は高く、道内農家への恩恵は乏しい。安い輸入牛肉が増えた結果、価格帯で競合する道産のホルスタイン種が買いたたかれる例もあり、農家や専門家はTPPの効果の検証と対策強化を求めている。

 「想像以上に輸出のハードルは高かった」。年間約70頭の黒毛和牛を出荷している十勝管内清水町の農業法人十勝清水コスモスファームの安藤智孝社長(41)は、ため息をついた。

 同法人は19年夏、TPPなどによる関税引き下げで輸入肉との競争が年々厳しくなる肉用のホルスタインの生産をやめ、黒毛和牛の生産に転換した。2億円近く借金をして母牛約300頭を購入し、子牛を約2年半育てて台湾などに輸出する計画だったが、来年からは生後30日前後の子牛の国内販売に専念する。

 政府はTPP発効後、農畜産物の輸出拡大に向け、食品衛生管理基準の認証期間短縮や輸出証明書の交付手続きの迅速化などを推進。その結果、18年に約3500トンだった牛肉の輸出量は、20年は約4800トンに増加した。20年の農林水産物・食品の輸出額は9223億円と8年連続で最高を更新し、政府は30年に5兆円まで増やすことを目指す。

 ただコロナ禍で外食需要が低迷する中、牛肉の輸出拡大を実現できたのは、資本力のある大手に限られる。安藤さんは今春、台湾のスーパーと黒毛和牛5頭分を輸出する商談が成立したが、通関手続きに1カ月以上かかった上、コロナ禍の航空便減で空輸できず、最終的に輸出を断念した。安藤さんは「輸出量が少ないため、代行業者に頼むと利益が出ない。大手の食品会社や商社だけでなく、道内農家が輸出に挑戦できる支援が必要だ」と訴える。

■「輸入」と競合 値引き

 輸入牛肉との価格競争も厳しさを増している。「国産牛は値段が高くて売れない。仕入れ価格を2割ほど下げてほしい」。十勝管内で肉用のホルスタインを生産する男性(44)は9月、首都圏のスーパーの担当者の言葉にあぜんとした。

 牛肉の輸入関税は18年のTPP発効で38・5%から27・5%となり、21年は25%まで下がった。米国、カナダ、オーストラリアの主要3カ国からの18年の輸入量は前年比7・8%増の58万9千トンに増加。今年も18年並みとなっている。

 国産牛との価格差は大きく、このスーパーの輸入牛肉の仕入れ価格は1キロ当たり約600円。これに対し、十勝管内の男性の生産牛は1キロ千円近い。

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