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暮らしと法律

サービス残業防ぎたい テレワークの勤務時間どう管理?

イラストはイメージです by iStock
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 新型コロナウイルスの影響で、テレワークが急速に広がっています。出社せずに働くため、会社側は勤務時間を管理しにくくなり、残業代が支払われない「サービス残業」につながる可能性が指摘されています。テレワークでの労務管理のあり方や、残業代が支払われなかった場合の対応について、札幌弁護士会の迫田宏治弁護士に聞きました。(聞き手 尾張めぐみ)

――そもそも労働時間は、どのように管理するべきなのでしょうか。

 厚生労働省は、2017年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定しています。同ガイドラインによれば、①使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること、②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること-のいずれかの方法によるのが、原則的な労働時間の把握方法であるとされています。

――自己申告は認められないのでしょうか。

 ガイドラインにおいても、自己申告制が否定されているわけではありません。ただ、社内で労働時間の正確な申告をためらわせる雰囲気があれば、少なめに申告する労働者が出てきます。使用者は労働者に対し、適正に申告するよう十分に説明する必要があります。

――テレワークで管理方法は変わるのでしょうか。

 テレワークになったからといって、管理方法が緩和されることはありません。使用者においては、ガイドラインにしたがった適正な措置が要請されます。

■労使協議 さまざまな場面想定し柔軟に

――テレワークの場合、使用者側が労働者の勤務状況を確認するのが難しくなります。時間内に仕事が終わらないと「効率的に働いていないと思われたくない」と労働者が申告しにくくなる可能性もあり、サービス残業が発生してしまう懸念があります。

 サービス残業を防ぐには、一定の時間が来たら、システムを遮断して仕事ができないようにするのも一つの方法です。残業を原則として禁じ、残業を必要とする場合には、必ず上司の事前決裁を得るようにしなければならない、というルール設定が必要になるかもしれません。ただ、このような措置を、もともと業務過多で、残業をしなければ仕事をこなせない業務量の事業場において導入したところで、かえってサービス残業を誘発し、絵に描いた餅に終わってしまいます。テレワークに限らず、働き方や労働時間の管理方法については、本来、労使が対等の立場で協議することが求められているといえます。

――自宅で仕事をする場合、宅配便の対応など、一時的に業務を離れる場面が増える可能性があります。

 会社で働いていても、お茶を飲んだり、トイレに行ったり、喫煙したりする時間はあります。常識的に考えて、これらの時間をあえて労働時間から除外するような運用がなされているとは思われません。そうしたことを踏まえると、宅配便の受け取りなどで一時的に仕事から離れる時間があったとしても、労働時間からは除外しないという運用で問題ないと考えます。

――夕飯の買い物に行ったり、子どもを保育園などに迎えに行ったりして、30分や1時間単位で仕事を離れる場合はどう考えるのが妥当でしょうか。

 例えば仕事を30分間離れるなら、その分終業時刻を繰り下げたり、有給休暇扱いにしたりする方法があります。あらかじめのルール設定が必要でしょうから、どこまで柔軟に対応するのかは、労使でいろいろな場面を想定しながら協議すべき内容です。

――残業時間を適正に申告したのに、会社側が適正に記録してくれない場合はどうしたら良いのでしょう。

 労働組合があるなら、まずは労組に相談し、労使間での協議事項として取り上げてもらうようにする必要があるでしょう。個々で声を上げづらい問題を拾い上げるのは、本来は労組の役割です。次に、労働基準監督署に相談する方法があります。それでも難しければ、弁護士に相談し、労働審判や民事訴訟の手続きなどを検討することになります。ただ、在籍しながら会社と裁判をすることは、通常困難です。裁判まで考えるのであれば、残業したことの証拠を残しておくことをお勧めします。

■メールなどの「証拠」は印刷を

――証拠となるのはどんな記録でしょうか。

 業務上の指示があって仕事をしていたことを、客観的な示すことができる記録です。例えば業務のメールやチャットがあれば、スクリーンショットや印刷して残しましょう。上司などから電話が来たら、通話記録の画面を保存しましょう。メモのみでは信用性が低いですが、残業がある日以外も、いつどんな仕事をしたか、誰と会ったかなどを毎日記録することで、信用性が高まります。

――会社に残業代を請求する場合、どれくらいさかのぼれるのでしょう。

 2020年3月31日までに支払期が来る賃金については、請求権の消滅時効期間は2年です。労働基準法の改正により、2020年4月1日以降に支払期が来る賃金について、請求権の消滅時効期間が3年に延長されました。毎月20日を給料日としている会社を例にとると、20年3月20日が給料日となる賃金の消滅時効期間は2年である一方、同年4月20日が給料日となる賃金の消滅時効期間が3年となったということです。今はいわば激変緩和措置を取っている状況で、この3年の消滅時効期間は、いずれ5年に延長されることになっています。

厚生労働省の資料を基に作成
厚生労働省の資料を基に作成


――あらためて、テレワークを導入する際の注意点は。

 もともと労働時間を適正に管理できていない会社が、より労働時間の管理が難しくなるテレワークを導入すべきとは思えません。年代や人によってテレワークが合う、合わないもあるでしょう。テレワークを契機として、適切な働き方や労働時間の管理方法について、労使で協議する文化が育つことが期待されます。


 <迫田宏治(さこだ・こうじ)弁護士> 1977年、広島市生まれ。東大法学部を卒業し、2005年に札幌で弁護士登録。市内の法律事務所に勤務後、06年にさこだ法律事務所を設立した。労働事件や債務整理、交通事故、離婚など幅広い問題を扱う。日本労働法学会会員。コロナで自宅にいる時間が増え、料理やユーチューブ動画を楽しむように。スコーンやサムゲタン、パエリアなどを作り、妻と味わっている。正随優弥、小園海斗、林晃汰、坂倉将吾ら成長著しい広島カープの若手選手の活躍は楽しみで仕方がない。今注目しているのが、プロ野球広島カープの新マスコットキャラクターであるムッシャー。「『スラィリーのムッシャー捕獲作戦』動画をぜひユーチューブで確認を」

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