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おわりのない海

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10代のころ、詩人の工藤直子さんにはおまじないの言葉があった。「十年後、十年後、十年後」。悩みを誰にも相談できず、ひとりぼっちのつらい時、繰り返しつぶやいたそうだ▼この世にいちゃいけないんじゃないかと絶望した夜中、一生懸命に自分に言い聞かせた。こんな状態が10年も続くはずがない。切羽詰まった胸苦しさは消えたと作家なだいなださんとの対談で語っていた▼明日すら想像することもかなわなかったのだろう。自殺した児童生徒が昨年度学校から報告があっただけでも415人に達した。すべてを終わらせたいとまで追い込まれた心中を思うと言葉がない▼工藤さんの「ともだちは海のにおい」(理論社)はお茶好きの小さなイルカとビール好きの大きなクジラが友だちになるお話。ともに泳ぐ2頭の姿はやがて区別がつかなくなり「おわりのない海」の詩で終わる▼ひとの心にうまれた 塩からい海は あふれつづけて おわりがない 海はすべてを溶かしこみ 海は 海のままである 喜びのしぶきは溶けて 海になる 悲しみの固まりも溶けて 海になる おどろきも おそれも 恥じらいも 誇りも すべては溶けて海になるばかり ひとは ふところの そんな海を のぞきこむと なぜか ほっとする なぜか ほっとして 思う ≪また あした≫▼子供たちの心が海で満たされ明日が訪れることを切に願う。2021・10・22

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