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<書評>子育て罰

末冨芳、桜井啓太著

一貫性ない児童手当や教育無償化
評 古田隆彦(現代社会研究所長)

 「子育て罰」って、子どもを育てるのが悪いってこと? いや、そうではない。子育てすることを罰にしている、この国の政治のありよう、社会のしくみと慣行、そして人々の意識のことだ、と本書は言う。

 日本の子育て層は、年金・社会保険料の負担が上の世代より高いうえ、子どもを育てて社会に貢献しているのに、児童手当や授業料無料、保育の提供などの恩恵を十分に受けていない。子どもを産み育てるほど生活が苦しくなり、低所得層はもとより中高所得層にも厳しい。このままでは、ますます子どもの生まれない国になる。

 なぜこうなったのか。直接的には一貫性のない子ども政策のせいだ。時々の政権によって児童手当の水準や教育の無償化などが揺れ動いてきた。日本の所得再分配政策はもともと低所得層、特に子育て中の働く層やひとり親世帯に不利だ。その背後には、子どもの価値の変化がある。「子ども天国」と呼ばれていた明治期から、現代の「子育て罰」社会に至るまでに、子どもの価値や意味は大きく変わった。明治初期には、地域コミュニティという「公的領域」の中で大人に慈しまれて助け合い、成長し合う姿であったが、近現代になると、女性は家庭へ、子どもは学校へと囲い込まれ、「公的領域」から排除されてしまったからだ。

 どうすればいいのか。政府が取るべき政策は、所得に関わりなく、あらゆる子どもに基礎的な児童手当を支給し、高校無償化や大学無償化の所得制限を緩和する。特に低所得世帯には児童手当と教育の無償化を手厚く加算していくことだという。

 そこで著者は多数の国会議員との対話を紹介しつつ、国民の多くが「子育て罰」解消の「声」をあげ、賛成派への「投票」拡大を提案する。実現できれば、近い将来「子育て罰」はなくせる、と断言する。

 果たして投票は解消の選択へ向かうのか。有権者全体の価値観にかかっていると思うが、出生数減少の詳しい背景分析と、回復策の具体的な提案については、人口減少社会を考える上で貴重な一冊だ。(光文社新書 1012円)

<略歴>
すえとみ・かおり 1974年生まれ。日大教授/さくらい・けいた 1984年生まれ。立命館大准教授

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