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札幌新交通システム、壁高く 新幹線見据え市が検討 安全性課題、見えぬ需要

 札幌市は2030年度末予定の北海道新幹線札幌延伸を見据え、路面電車(市電)のJR札幌駅などへの延伸を検討してきたが、自動運転の水素燃料バスなど新たな交通システムの導入も合わせて検討する方針に転換した。市電延伸は多額の赤字が見込まれるためだ。ただ、新交通システムには技術的な課題があり、需要も見通せないため、実現のハードルは高そうだ。

 「レールや架線のない新しい公共交通システムも含めて検討を進める」。秋元克広市長は9月29日の定例市議会本会議で、市中心部の大通地区と札幌駅などを結ぶ交通手段について、こう表明した。市電延伸の旗は降ろさないものの、自動運転の水素燃料バスなどの活用や、人工知能(AI)技術を使い予約に応じて運行するデマンド交通なども含めて検討する考えだ。

 市は上田文雄前市政の2010年から市電の延伸を検討。15年12月には西4丁目停留場―すすきの停留場を結ぶループ(環状)化を実現し、さらに札幌、苗穂、桑園のJR各駅への延伸について検討を続ける。北海道新幹線がつながる札幌駅、再開発が進む苗穂、桑園両駅周辺と、大通・すすきの地区を結ぶことで交通利便性を高め、市中心部の活性化につなげる狙いがある。

 しかし、市は3月、市電の現路線と札幌駅方面とを結ぶ延長約4キロをループ化した場合、整備費が50億円規模に上ると試算。1日最大4千人の利用が見込めるものの、開業初年度から赤字が続き、30年後には多額の累積欠損金を抱えると推計した。札幌駅前通を市電が走ることで、同駅周辺の商業施設の荷さばきや一般車両の通行に影響を及ぼす恐れもある。市幹部は「延伸した場合の維持費も考えると、実現は限りなく難しい」と打ち明ける。

 一方、自民党の道内選出国会議員や市議らは、創成川東部地区への新幹線駅設置が決まった18年ごろから市電延伸を主張。低床、バリアフリー化した次世代型路面電車(LRT)の導入などを市に働きかけてきた経緯があり、市が是非を示すのは「時期尚早」と判断したとみられる。

 そうした中で浮上したのが新交通システムだ。水素燃料車などは環境への負荷が少なく、線路や架線も必要ないため膨大な初期投資が回避できる。市電の西4丁目停留場と接続し、当面は札幌駅の新幹線東改札口や苗穂駅などを巡り、商業施設サッポロファクトリーなど10カ所程度の乗降所を設けることを想定する。

 大手自動車メーカーは非ガソリン車や自動運転車両の開発に関心を示しており、市は2年後にも、AI研究に力を入れる札幌市立大などと、需要や安全性などを確認する社会実験を行う方針。廃止が検討される郊外の民間バス路線や、市営地下鉄延伸の代替手段としても活用できないか探る方針で、市幹部は「導入の見通しがつけば、人口減や高齢化に対応する都市交通のパラダイムシフトを起こせる」と期待を寄せる。

 ただ、水素燃料車や自動運転などの実用化が進むが、高い安全性が求められる公共交通機関に導入するためには、技術がさらに成熟する必要がある。また、新幹線東改札口は1日約3千人の利用を見込むが、市中心部は地下鉄やバスなどの交通手段が既に整っている上、札幌駅からすすきの地区までは地下歩行空間と地下街でつながっており、新交通システムの需要は見通せない。市役所内には「見切り発車は新たな負担を背負い込むだけだ」と導入に否定的な見方もある。

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