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<再エネの今>1 風力 独自送電網で導入加速

 温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルに向けた動きが本格化してきた。4日に発足した岸田文雄政権も脱炭素化の鍵を握る再生可能エネルギーの必要性を認めるが、ひと口に再エネと言っても太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス…と多岐にわたる。それぞれの長所と短所は何なのか。潜在力が高いとされる北海道の現状を課題とともに紹介する。(6回連載します)

 稚内市街地から南東へ道なりに約15キロ。道道沿いの広大な草地に、送電線を支える高さ約60メートルの鉄塔が数珠つなぎのようにそびえたつ。

 設置したのは、北海道北部風力送電(稚内)。風力発電国内最大手のユーラスエナジーホールディングス(東京)が北海道電力などと2013年に設立した。ユーラスの加藤潤稚内支店長は「再エネ導入を増やす上で、送電網の整備は不可欠」と語る。

■国内有数の適地 

 道北は半島的な地形や気圧配置の影響で風の強さや向きに恵まれ、国内有数の風力発電の適地とされる。

 だが人口密度が低く、既存の送電線が細いため、大量に発電しても札幌圏などの大消費地に送りきれない―というジレンマを抱える。風力は天候による出力変動が大きく、安定供給には蓄電池などで調整する必要もある。こうした課題をクリアするため、独自の送電網整備に乗り出した。

 稚内などから上川管内中川町で建設中の北海道電力ネットワーク西中川変電所まで延べ78キロを整備中で、途中の宗谷管内豊富町には世界最大級の蓄電池を併設する。国が4割を補助する総事業費は1050億円に上る。ユーラスなど3社の陸上風力発電所8カ所(計54万キロワット)と接続し、23年度の送電開始を予定する。

■接続検討1641万キロワット

 道内で風力発電を目指す事業者は多い。北電ネットの送電網に接続している合計出力は7月末で53万キロワットにとどまるが、接続の検討を申し込んでいるのは接続済みの30倍強の1641万キロワット。北電の主力電源である苫東厚真火力発電所(胆振管内厚真町、165万キロワット)の10倍近い規模に上る。新電力道内最大手の北海道ガスも1日、稚内の稼働済み風力発電所を取得した。

 国が切り札として期待する洋上風力は、遠浅で施工しやすいとされる石狩湾沖で50万~100万キロワット級の計画が相次ぐ。国は北海道―関東に400万~800万キロワットの海底送電ケーブルも敷設する方針だ。

■地産地消の動き

 こうした動きに「供給基地として主体的に関わらないと、ただ搾取されるだけになりかねない」(自治体関係者)と懸念する声もある。

 石狩湾新港ではグリーンパワーインベストメント(東京)の風力発電所(11万2千キロワット)が23年に稼働するが、石狩市などは余剰電力でつくった水素を地元企業に提供することを検討。「地産地消の一つの形をつくりたい」(市企業連携推進課)とする。

 景観や自然保全、漁業者との調整など地域との協調も欠かせない。国は新設時に環境影響評価(アセスメント)を義務付ける対象を規制緩和し、「出力1万キロワット以上」から「5万キロワット以上」に改正する政令を1日に閣議決定したが、これまでには風車が発する低周波音や野鳥の衝突死が問題になったことも。名古屋大大学院の丸山康司教授(環境社会学)は「事業者は事後対応も含めて適切に行うべきだ」と強調する。(田中雅久)

■道内太陽光202万キロワット、風力53万キロワット
 再生可能エネルギーは太陽光や風力など、自然界に存在し、永続的に利用できるエネルギーの総称。温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を出さないのが特徴で、再エネで発電した電気を電力会社が一定期間、一定価格で買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」が2012年に始まり、導入が加速した。

 国は今年7月に公表したエネルギー基本計画の素案で、30年度の電源構成目標について、再エネの比率を36~38%と現行計画の1・6倍に引き上げた。一方、石炭や石油などの化石燃料を使う火力発電の割合は引き下げ、原子力は20~22%で据え置いた。

 北海道電力ネットワークの送電網に接続している再エネ発電設備の合計出力は、7月末時点で太陽光202万キロワット、水力165万キロワット、風力53万キロワット、バイオマス51万キロワット、地熱3万キロワットの計474万キロワット。近年は接続が伸び悩んでいたが、北海道電力は昨年4月、原子力と再エネを合わせた非化石電源を30年度に60%以上とする目標を掲げており、実現に向けた対応が注目されている。

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