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<北海道 移住者たちの選択 十勝東北部編>ゲストハウス経営 エゾシカ6次化ビジネス展開

 北海道へ移り住んだ人たちの選択を探るシリーズ<北海道 移住者たちの選択>。十勝東北部編の7回目は、足寄町内の古民家でゲストハウスを営む儀間雅真(ぎま・まさなお)さん(34)と妻芙沙子(ふさこ)さん(34)の夫妻です。今年初め、思い切った決断を下しました。雅真さんがライフワークとする「狩猟」でビジネスを起こそうと、エゾシカの狩猟から解体、販売まで一貫して行う野生肉専門店「やせいのおにくや」を立ち上げました。シカの増加による深刻な農林業被害。この課題を解決し、シカ肉の新たな需要を掘り起こすため、その拠点と位置付けます。ゲストハウスも移住者の集まる交流の場となっており、人口減の進む足寄町を盛り上げる名物夫妻として注目されています。(文/本別支局 岡田圭史、写真/帯広報道部 北波智史)

ゲストハウス「ぎまんち」を拠点に足寄町で交流の輪を広げていく儀間雅真さん、芙沙子さん夫妻
ゲストハウス「ぎまんち」を拠点に足寄町で交流の輪を広げていく儀間雅真さん、芙沙子さん夫妻


 「ジビエを手軽に楽しめるなんて、最高」「シカ肉は、くせがなく、あっさりしていて食べやすい」―。

 十勝管内足寄町内で3月から、毎月第4火曜日を「鹿の日」とし、シカ肉料理「鹿ランチ」の提供が始まった。多目的施設「はたらくものづくり村かってば」などを中心に、野生鳥獣肉を使ったジビエ料理を身近に感じてもらう取り組みだ。

 シカ肉は、ハンターの資格を持つ雅真さんが、自ら狩猟して加工。足寄を拠点に出張レストラン「コビトの台所」を展開するイタリアンシェフ岸友哉さん(37)らが、新鮮な素材を損なわないよう調理する。

 鹿ランチを発案したのは、雅真さんの妻芙沙子さんだ。「シカ肉の魅力を知ってもらいたくて。ひき肉にすれば、家庭料理でも調理しやすいんです」。高級食材と思われがちなジビエが「ハレの料理」でなく、「身近な存在」になってほしいとの思いからだ。参加者にはレシピも配る。

 地場の食材をふんだんに活用し、スイーツや飲み物などの追加メニューも。地元の生産者や飲食店関係者とコラボし、足寄の魅力を発信することも忘れない。

 鹿ランチは月替わりメニューで、「鹿の肉味噌うどん」「鹿のロールキャベツ~フォンドジビエのソース~」「鹿肉のオッソブーコ(煮込み料理)」「鹿のコロッケ」など和洋さまざま。1500円前後と手ごろな価格帯に抑えている。告知は会員制交流サイト(SNS)のみだが、定員の20~30人は、町内外の常連客でほぼ満員になる盛況ぶりだ。

 雅真さんが仕留めて加工したシカ肉は、プロの評価も三つ星だ。ジビエ料理の経験豊富な岸さんは語る。「今でこそ『害獣駆除』の対象ですが、もともとシカは質の高い食材。儀間さんのシカ肉は上質で、本州では手に入らないくらい、新鮮。仕留めた後の処理がうまいので、いつもいい肉を提供してもらっています」

 夫妻は2017年に横浜から移住。雅真さんのライフワーク「狩猟」をビジネスに活用しようと、今年に入ってエゾシカの狩猟から解体、販売まで一貫して手掛ける野生肉専門店「やせいのおにくや」を開いた。「シカによる深刻な農林業被害という地域の抱える課題を解決すると同時に、シカ肉の新たな需要を掘り起こす拠点にしたい」

狩猟から解体、販売まで―。足寄町に野生肉専門店「やせいのおにくや」を開いた儀間雅真さん
狩猟から解体、販売まで―。足寄町に野生肉専門店「やせいのおにくや」を開いた儀間雅真さん


 シカと並び、儀間夫妻の代名詞となっているのが、足寄中心部に構えるゲストハウス「ぎまんち」だ。足寄神社を建てた宮大工が手掛け、緻密な職人技の光る日本家屋。建材や欄間(らんま)などにこだわりや趣を感じる。

 移住後の収入の柱にしようと、2018年に民泊事業もスタート。最大10人が宿泊でき、国内外から多くの旅行客が訪れる。新型コロナウイルスの影響は大きいが、宿泊以外に、個々の特技を生かしたワークショップやイベント、交流会に活用する地元住民も増えた。雅真さんは「新たな人の流れをつくり、つながりを深めていきたい」と力を込める。

 岸さんも「田舎生活」に憧れ、儀間夫妻に触発された移住組。今年春、群馬県から足寄に移り住んだ。岸さんは「移住のきっかけになったのも儀間夫妻のおかげ。夫妻は面白い企画をいろいろとやってくれるので、今後も連携させてもらえれば」と期待を寄せる。

 移住者の輪が「草の根」で広がる好循環を生んでいるようだ。

 ハンターと、ゲストハウス経営。二つの事業を手がかりに、儀間夫妻の目指す先は―。

=十勝東北部編8回目は、10月26日に配信します。

■シリーズ<北海道 移住者たちの選択>
 北海道に移り住んだ人たちが、移住前に何を思い、葛藤し、どんな希望を持って「北海道」を選んだのか、その一端を紙面で紹介しつつ、決断の舞台裏を電子版で詳しくお伝えします。
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