PR
PR

<#闇バイトの先に>上 受け子抜け出せず実刑「警察につかまってよかった」

 黒縁の眼鏡をかけ、おとなしそうな見た目。詐欺罪などで服役中の山口みさと受刑者(29)=仮名=は6月下旬、札幌刑務支所(札幌)の面会室で語り始めた。「最初は割のいいアルバイトと思った。1回やって犯罪と気付いた後も、抜け出せなくなってしまった」

■スマホで応募

 スマートフォンでアルバイトを検索して見つけた「闇バイト」を募る投稿。申し込むと、バイトの中身は、高齢者宅を訪ね、キャッシュカードを回収する特殊詐欺グループの「受け子」だった。

 バイトを探し始めたきっかけは、新型コロナウイルス下での生活苦。道東の高校を卒業後、コンビニエンスストアなどに勤めたが、人間関係がうまくいかず長続きしなかった。札幌市内の風俗店で働いていた昨年2月、新型コロナの感染拡大で客が激減した。収入は月10万円以下に。奨学金など月5万円の返済が必要だったため、「100円のおにぎりで食費を切り詰め、空腹時は水を飲んだ」。

 両親は小学生の時に離婚。頼れる親族はおらず、仕事を一人で必死に探した。誰でも簡単にでき、短期間で高収入―。そんな時、短文投稿サイト「ツイッター」で見つけたのが、「闇バイト」募集の投稿だった。

■指示役が脅し

 昨年3月に連絡し、指示されるまま、自分の氏名や実家の住所、連絡先を送信すると、訪問先や手口を伝えられた。女性警察官などを名乗って高齢者宅を訪ね、カードを受け取る役割だった。だます言葉などは、スマホのアプリを通話状態にして、男からイヤホンを通じ、逐一指示された。「罪悪感を感じていたが、誰にも相談できなかった」

 昨年4月以降、道央や関東の高齢者宅を訪ね、4人からカード9枚を詐取するなどし、口座から不正に引き出された被害額は計約530万円。その5~10%を報酬として受け取った。

 途中でやめようと思ったものの、抜け出せなかった。「やめたいです」とメッセージを送ると、指示役の男の態度が豹変(ひょうへん)。「中国に売り飛ばす」「家族に危害を加える」と脅された。「警察につかまると思ってビクビクしてました」。山口受刑者は記者への手紙で、当時の心境をつづった。

■トカゲの尻尾

 「何をしたか分かっているよね」。最初の犯行からわずか3週間後の昨年5月中旬、防犯カメラの映像をもとに調べていた捜査員に江別市内で声を掛けられ、窃盗未遂容疑で逮捕された。「これでやめられる」。捕まった時、山口受刑者はそう感じたという。札幌地裁は今年1月、被害額の大きさなどから初犯でも執行猶予は付けず、懲役3年の実刑判決を言い渡した。

 一方、指示役の男は今も特定されていない。道警によると、昨年1月~今年7月に逮捕した「受け子」は計47人に上るが、多くの事件で指示役は捕まっていない。メッセージの記録が自動的に消去されるアプリ「テレグラム」で受け子と連絡を取り、証拠隠滅を徹底しているためだ。道警幹部は「受け子はトカゲの尻尾にされている」と語る。

 面会取材で改めて被害者への思いを聞くと、「申し訳ないことをしました」と言葉少なに語った山口受刑者。手紙ではこうもつづっていた。「事件のことは忘れずに償っていきたい。(被害者には)許してもらえないと思う」。その被害者は心に傷を負っていた。

 闇バイトと称して特殊詐欺に加担した容疑者と、財産を失った被害者。それぞれのその後を追った。(高野渡が担当し、2回連載します)

【関連記事】
<#闇バイトの先に>下 募る自責、よぎった自殺 220万円失い「娘に言えない」
ツイッターの「受け子」勧誘後絶たず 逮捕者の9割 道警は警告投稿「安易に応じないで」

PR
ページの先頭へ戻る