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<余市 ワイン産地に誘われて 特区10年>上 世界見据える「ヨイチ」

 秋風が吹き始めた後志管内余市町で9月、二つのワイナリー(醸造所)が生まれ、計15カ所になった。14番目の「山田堂」代表の山田雄一郎さん(34)は、ブドウ畑のそばで酒造免許を手に息子を抱き上げた。「息子の代、その先まで続く。そんな土地を求めていた」

 「飲んだ後の余韻が長い」と心揺さぶられた2014年産の「ナナ・ツ・モリ」に導かれ19年、余市に移住。生産したワイナリー「ドメーヌ・タカヒコ」代表の曽我貴彦さん(48)に学んだ。
■ソムリエ魅了

 このワインは「気付いたら飲み終わっていた」とオーストラリア・シドニー生まれの高松亨さん(26)も魅了した。英国に本部を置く認定機関で最高峰の資格「マスター・ソムリエ」を日本人で唯一取得し、曽我さんの単一品種・少量生産のスタイルに共感。5月に町の地域おこし協力隊員(ワイン産業支援員)となり、曽我さんのもとでワイナリー開設を目指しつつ、余市産ワインを世界的なブランドに育てる役割を担う。

 町が11年11月に道内初のワイン特区となって、もうすぐ10年。免許取得に必要な醸造量は年間6キロリットルから2キロリットルに引き下げられ、ワイン醸造に参入しやすくなった。15カ所のうち8カ所はこの制度を使った。
■国内で存在感

 高品質なワイナリーなどを格付けする「日本ワイナリーアワード2021」で、町内では10カ所が最高賞を含む入賞に。その存在感は国内で増している。

 節目の年に、町はワインに軸足を置いた地域おこし協力隊員3人を起用。高松さんの役割について斉藤啓輔町長は「品評能力の高い英国で、余市を産地として認識してもらうことが発展につながる」と期待する。

 高松さんは余市産ワインの魅力を「ブドウ本来の味を生かす造り」と語り、英国や米国などの輸入業者への売り込みを図る。「高品質なワインとして扱われると、有名レストランのトップソムリエの目にとまる。同じワインの名前に出合えば有名な産地と受け止められ、ブランドが形成される」

 「ヨイチ」の名をどう広めるか。その挑戦は食の分野でも始まっていた。
(余市支局の松嶋加奈が担当し、3回連載します)

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