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危急存亡の秋

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帰宅したらまず手洗い、うがい。そんな習慣が染みついた。気がつけば、蛇口から流れる水がひんやりしている。<秋水にひたしたる手をひとふるひ>石田勝彦。新型ウイルスとの戦いも、幾多の季節を超え長くなった▼3連休が明け、延長を重ねた緊急事態宣言の期限となる月末が近づいてきた。こんどこそ解除できるのか、再延長を余儀なくされるのか。病床逼迫(ひっぱく)に直面する医療関係者や、業績低下に悩む経営者にとってはまさに「危急存亡の秋(とき)」ではなかろうか▼「三国志」の軍師諸葛亮が魏討伐の遠征出陣に際してまとめた書状「出師表(すいしのひょう)」がこの成句の原典である。劉備の帝位を継いだ息子の劉禅に向け、天下の危機を認識し、国民の疲弊に目を向け、臣下の意見に耳を傾けるよう求めた▼戦いが熱を帯びる自民党総裁選も群雄割拠の様相を見せている。だが、次期首相の座をめぐる権力闘争に没頭する前に、世の中の窮状をよく見てほしい。存亡のきわに置かれているのは、党ではなく国民生活だ▼「秋」を「とき」と読むのは、万物が実りを迎える季節になぞらえて、大切な時であることを示す意味があるという。阿辻哲次著「遊遊漢字学」によれば、漢文の学習が学問の中心だった時代に広く使われた訓読のようだ▼この冬にかけては「第6波」到来の予測もある。国の将来を左右する重大な局面と心得て、気を引き締めて過ごしたい。2021・9・21

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