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<北海道 移住者たちの選択 十勝東北部編>人と人つなぐ癒やしのカフェつくる

 北海道へ移り住んだ人たちの選択を探るシリーズ<北海道 移住者たちの選択>。十勝東北部編の6回目は、十勝管内足寄町にある「螺湾(らわん)」と呼ばれる約80人の小集落でカフェの店長を務める細矢千佳さん(29)です。北海道の大自然に憧れ、山形県酒田市から帯広畜産大に進学し、卒業後は足寄町の地域おこし協力隊員として観光促進に関わります。しかし、新型コロナウイルスが広がり始めた昨年春、思い切った決断をします。任期1年で協力隊員を退職し、カフェを運営する町内の農業生産法人に転職したのです。「山形に戻るつもりはありません」と、あえて退路を断つ細矢さんにはどんな思いがあるのでしょうか。カフェはコロナ禍にもかかわらず、道東各地からの来客でにぎわう中継地として定着しました。人と人をつなぐ癒やしの場をつくろうと奮闘する毎日です。(文/本別支局 岡田圭史、写真/帯広報道部 北波智史)

窓から畑が見渡せるカフェ「カミーノ」で店長を務める細矢千佳さん=8月7日、足寄町螺湾
窓から畑が見渡せるカフェ「カミーノ」で店長を務める細矢千佳さん=8月7日、足寄町螺湾

■カラマツで木組み 内壁にはラワンブキの和紙

 十勝管内足寄町の中心部から北東へ車で約20分。「ラワンブキ」で有名な100人にも満たない小集落の螺湾地区。道沿いに、木のぬくもりの伝わるおしゃれなカフェがぽつんとたたずむ。

 店の名は「カフェ デ カミーノ」。店長の細矢千佳さん(29)が名付けた。「螺湾の自然や農村風景を楽しめるカフェにしたい」。そんな思いが、建物の細部にまで行き届く。

道沿いに立つカフェ「カフェ デ カミーノ(Cafe de Camino)」の看板=8月7日、足寄町
道沿いに立つカフェ「カフェ デ カミーノ(Cafe de Camino)」の看板=8月7日、足寄町


 「林業のまち」らしく、カラマツ材をたっぷり用い、くぎや金物は使わない「木組みの家」に仕上げた。店に入ると、内壁に目を奪われる。特産のラワンブキをすき込んだ和紙が一面に貼られ、フキ独特の渋い緑が優しく光を受け止める。窓の外には、カフェを運営する農業生産法人「足寄ひだまりファーム」の畑や牛舎などの風景が広がる。

カラマツ材で使って「木組みの家」に仕上げた外観
カラマツ材で使って「木組みの家」に仕上げた外観

店内の壁紙にはラワンブキがすき込まれている
店内の壁紙にはラワンブキがすき込まれている


 特製メニューは、ラワンブキ入りのパウンドケーキ、十勝産の小麦やライ麦にこだわったパン、農場の野菜を使った日替わりスープ、自家製のイタリア伝統菓子「ビスコッティ」…。

キッシュプレートと、ひだまりファームのとうきび茶
キッシュプレートと、ひだまりファームのとうきび茶

珈琲フロート
珈琲フロート


 店員はおらず、1人で切り盛りする。繁忙期の夏休み中は、ひだまりファームの沼田正俊代表(44)の娘杏子ちゃん(9)が、頼もしい助っ人に。大忙しの細矢さんに代わって、テーブルの片づけや清掃などを受け持つ。「千佳ちゃんと一緒に仕事するのが楽しい」

店長の細矢千佳さんと、沼田杏子ちゃん。あうんの呼吸で手伝ってくれる=8月7日、足寄町
店長の細矢千佳さんと、沼田杏子ちゃん。あうんの呼吸で手伝ってくれる=8月7日、足寄町


 細矢さんは広島県で生まれ、山形県酒田市で育った。高校時代、陸上部の合宿で深川市へ。初めての北海道で「段違いの広大な風景にすっかり魅了された」。

 酪農を舞台にした人気漫画「銀の匙」の連載が始まったころ、帯広畜産大に入った。大学院に進み、1年間休学して「中南米留学」と位置づけ、地球の裏側で、リュック一つの「バックパッカー」で8カ月かけて中南米16カ国を巡った。

 旅を通じ、「北海道で外国人を受け入れ、国際交流を手伝う仕事ができたら」との思いを強くし、北海道への移住を決める。帰国後の2019年4月、足寄町の地域おこし協力隊員として「観光振興」担当に。沼田代表と知り合った縁で20年4月、ひだまりファームに転職した。新規事業のカフェ運営を任され、昨年8月、オープンにこぎ着けた。

 店のコンセプトは「心に余白を」。新型コロナウイルスの影響で苦戦を強いられる中、さまざまなアイデアで道を切り開く。「あれをやりたい、これをやりたい。思いついたら口にしてみる。すると、周りの人たちが応援してくれ、一人で動くよりも大きく、遠くに進めるようになりました」

 店名の「カミーノ(Camino)」は、スペイン語で「道」。「人生のように長い道のりをカフェと共に歩み、人として成長していきたい」。そんな思いを込めた。2年目の夏、新たな目標を見据え、歩み始めた。

スペイン語で「道」を意味する「カミーノ(Camino)」を店名に
スペイン語で「道」を意味する「カミーノ(Camino)」を店名に

■シリーズ<北海道 移住者たちの選択>
 北海道に移り住んだ人たちが、移住前に何を思い、葛藤し、どんな希望を持って「北海道」を選んだのか、その一端を紙面で紹介しつつ、決断の舞台裏を電子版で詳しくお伝えします。
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