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リスペクトの仕方

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今年31年ぶりに更新された陸上競技の世界記録がある。男子砲丸投げだ。6月の全米五輪選考会でクルーザー選手が23メートル37を投げ、従来の23メートル12を塗り替えた▼1990年の記録を打ち立てたバーンズさんはアトランタ五輪金メダリスト。その競技の魅力について最高の投てきができた時の喜びだと語っていた。醍醐味(だいごみ)は記録や勝敗だけではないということだろう▼2年ぶりの開催となった全国高校野球選手権は智弁和歌山が兄弟校対決を制した。21年ぶりの優勝だ。それでも勝利の瞬間、マウンドに集まった選手が歓喜の輪を作るおなじみの光景はなかった▼主将の宮坂厚希選手は試合後「礼に始まり礼に終わるということで全て終わってから喜ぼうと」思ったと話した。中谷仁監督が試合前日、相手への敬意を重んじようと話したそうだ▼喜ぶ行為自体が否定されるものではない。智弁和歌山の選手も整列後にはスタンドに向けて歓喜の声を上げた。まず対戦相手の心中に思いを致したということだろうか▼バーンズさんは98年、ドーピング検査で陽性となり、競技資格を剥奪された。市販薬の服用が原因だった。かつての言葉にうそはないだろう。対戦相手はもちろん、競技へのリスペクト(敬意)は人一倍強かった人だ。一時は取り消しも取り沙汰された世界記録が更新されたことを一番喜んだのは、バーンズさん自身だったのかもしれない。2021・9・1

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