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<函館 みらいをつくる未来大>上 学生の発想 社会変える

 函館市郊外にある公立はこだて未来大校舎前。4年の鈴木あゆみさん(22)=岩見沢市出身=が、厚みのある中敷き入りの靴を履いて歩きだした。センサーが仕込まれた靴は振動を感知すると震える。足裏で振動を感じ、地面を介して交信するゾウの感覚を体験する靴だ。製作した鈴木さんは「ゾウの気持ちが分かります。子どもたちに未知の体験を提供したい」と話す。

■学外から視察

 同大は2000年にシステム情報科学部のみの単科大学として開学した。地域や企業と連携したユニークな研究で知られ、道内外から注目を集める。目玉の一つは、専攻が異なる学生がチームを組み、教員の指導を受けながら、1年かけて実社会などの課題解決に取り組む3年生の必修「プロジェクト学習」。02年から全国に先駆けて取り組み、学外からの視察も多い。ゾウの靴も鈴木さんのチームが進める「サファリプロジェクト」で生まれた。

 企業の依頼で始まる研究もある。サファリプロジェクトは、同大の岡本誠教授(65)が国内最大級の動物園の富士サファリパーク(静岡県)から「動物と人間の関係を近づける方法はないか」と相談を受け、昨年春に学生15人のチームが発足した。ゾウの靴はサファリの獣医師の「ゾウは足裏で低周波を感じ、遠くの仲間とやりとりする」という話に着想を得た。

 5月に同大と連携協定を結び、研究成果を動物の生態を学ぶ環境整備に生かす計画のサファリの勝間田啓三園長は「動物の息づかいや体の仕組みを伝える機会になる」と学生の柔軟な発想に期待する。

■企業も高評価

 プロジェクト学習はこれまでも「いか型ロボット」「函館観光情報の多言語発信」など多くの研究を生み出した。今も学外と10以上のプロジェクトが進む。

 学生にとっても魅力となっている。学生1088人のうち約48%が道外出身者。サファリプロジェクトで動物に触れない子どもが動物のぬくもりを感じられる「命のぬいぐるみ」を人工毛皮などで作った4年の辻美祝(みのり)さん(21)=神戸市出身=は「未来大はこれからの生活に欠かせないITに特化して学べ、現代社会の最先端をつくる研究もある」と語る。

 現実の課題にチームで取り組む体験は、企業からも高く評価されている。20年3月までの同大の就職率はほぼ毎年90%台後半だ。

 同大は新型コロナウイルス禍の昨年、開学20年を迎えた。片桐恭弘学長(67)は力を込める。「現場に生きてこその情報技術。社会に還元される教育や研究を進めたい」(函館報道部の矢野旦が担当し、3回連載します)

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