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「北海製缶倉庫」活用へ前進 小樽市が無償譲渡申し入れ方針 維持費確保、用途規制が課題

 【小樽】小樽運河沿いに立つ小樽市指定の歴史的建造物で、解体が検討されている「北海製缶小樽工場第3倉庫」(港町)を巡り、市は所有する北海製缶(東京)に土地・建物の無償譲渡を求める方針を固めた。まちづくりや観光振興に生かす狙いで、解体猶予期限の10月末が迫る中、倉庫の保全・活用へ大きく前進した。経済界を中心とした民間組織も9月下旬に市に活用策を提案する予定で、官民の足並みがそろう形になるが、建物維持の財源や土地の用途規制などの課題も残る。

 「歴史的な景観そのものが小樽の財産であり、観光資源だ」。小樽市の迫俊哉市長は27日、取材にこう強調し、市が譲渡を受けて所有する方式で建物を残す考えを明らかにした。

 倉庫は小樽運河エリアのランドマーク的存在。北海製缶も譲渡に一定の理解を示しており、解体は回避される見通しだ。迫市長は「市所有となれば、運河と一体となった景観と歴史性を市が守るという意思表示になる」と語る。

 市の決断の背景には、保全を求める民間の動きがある。小樽商工会議所や建築の専門家などでつくる民間組織「第3倉庫活用ミーティング」は今年1月から保全・活用策を検討。今月23日の会議では、市に9月に提案を予定するプランの原案が示された。

 柱は《1》当面は市が土地・建物を所有《2》文化庁の技術指導や財政支援を得られる国の登録有形文化財への登録を申請《3》倉庫の運営は活用ミーティングを母体とした民間団体が担う―の三つ。中長期的に民間投資を活用し、歴史博物館やレストラン、現代アート美術館などの複合施設に衣替えする案も取りまとめた。

 ただ、築97年の倉庫は外壁が崩れ老朽化が進む。建物も大きく、活用ミーティングメンバーで「第3倉庫の次世代活用を考える若者ネットワーク Non(ノン)―」の峰尾光人代表は「これだけの規模の建物を現実的にどう扱えばいいのか。今は理想でしか語れない部分がある」と戸惑いも見せる。

 北海製缶の試算では、建物の本格的な補修費に1億2千万円程度、年間維持費は250万円ほどかかる。無償譲渡を受けても多額の資金が必要だ。市の財政事情も厳しく、地元経済界などは水面下で同社に資金面での協力を打診。小樽出身で倉庫問題を担当する同社の武田卓也常務は「市から正式に(金銭的支援や無償譲渡などの)要請があれば検討したい」と語るが、抜本的な資金確保の妙案は浮かばないままだ。

 土地が港湾法に基づく市の条例で、用途が工場などに限定されていることも壁になる。飲食店や物販店として活用するには、用途変更手続きに1年半程度かかるとみられるからだ。

 課題は山積するが、景観保存は小樽観光の根幹に関わるだけに、市民の関心も高い。活用ミーティングの駒木定正座長は「実際の活用には時間がかかる。慌てず、一つずつ解決することが大事だ」と息の長い活動を模索している。(平田康人)

<ことば>北海製缶小樽工場第3倉庫 小樽運河ができた翌年の1924年(大正13年)に、当時の最先端工法を駆使して完成。鉄筋コンクリート4階建て、延べ約7200平方メートル。2012年に小樽市の歴史的建造物に指定された。解体方針が示された後、民間組織「第3倉庫活用ミーティング」が発足し、保全・活用策を議論してきた。

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