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<デジタル発>ケニアで「共に生きる」 障害児支援に取り組む小児科医の言葉

ケニアで障害児と共に生きる公文和子さん(千葉康由さん撮影)
ケニアで障害児と共に生きる公文和子さん(千葉康由さん撮影)


 アフリカの大地で、「共生社会」の実現に奔走する小児科医がいる。北大医学部出身の公文和子さん(52)。ケニアの首都ナイロビで、障害児の療育施設「シロアムの園」を運営している。「障害は悪霊が取りついたせい」といった伝統的な差別や偏見が今なお残る環境で、子どもたちのゆっくりとした成長を支え、家族や地域とも向き合う。健常者と障害者。若者とお年寄り。日本人と外国人―。日本でも「共生」の実現は、社会のあらゆる場面で求められているが、立場の違いによる分断や無関心の壁が立ちはだかる。社会に存在する「違い」と、どのように向き合えば良いのか。5月中旬、公文さんと、札幌市で障害児の総合的なケア事業を手掛ける小児科医の土畠智幸さん(43)が「共生」をテーマに対談し、オンライン配信された。2人の小児科医の対話に、「誰もが共に生きる」ためのヒントがあった。(報道センター 門馬羊次)

㊧くもん・かずこ 1968年、和歌山県生まれ。北大医学部を卒業し、小児科医として室蘭や千歳などの病院に勤務。2001年から西アフリカのシエラレオネの難民キャンプで医療活動に従事。翌年からケニアに活動拠点を移し、エイズなどの感染症対策に取り組み、2015年に「シロアムの園」を設立した。今回のオンライン対談は、ケニアでの活動の日々をつづった著書「グッド・モーニング・トゥ・ユー! ケニアで障がいのある子どもたちと生きる」(いのちのことば社)が6月上旬に刊行されたのを記念して行われた。
㊨どばた・ともゆき 1977年、札幌市出身。北大医学部を経て、手稲渓仁会病院小児科(札幌市手稲区)に勤務。2013年に医療法人「稲生会(とうせいかい)」(同)を立ち上げ、人工呼吸器などを使う障害児らの在宅診療や短期入所事業所などの運営に取り組む。2019年に設立された公文さんの活動を支援する団体「シロアムの友の会」の発起人。

 シロアムの園 障害児に医療、リハビリ、教育などを提供する通所型施設。現在、97人の児童が利用登録し、定期的に45人が通っている。脳性まひやダウン症などを抱える子どもたちを、医師、理学療法士、教員、保育士、ソーシャルワーカーなどのスタッフ18人がサポート。ケニア政府などからの資金援助はなく、日本からの寄付金などで運営している。「シロアムの園」の名称は、新約聖書でイエス・キリストが盲人を癒やした池の名前に由来している。

■傲慢な気持ち

 土畠さん 公文先生は著書「グッド・モーニング・トゥ・ユー! ケニアで障がいのある子どもたちと生きる」の中で、小児科医として日本で働いていたころの自分について、「医者は人を救える。そんな傲慢(ごうまん)な気持ちでいたのだと思います」と書いていたのが、印象的でした。

 公文さん 医者という仕事は「謙虚にいたい」と思っていても、前線を走り始めると気が付かないうちに、仕事が自分主導になってしまうことがあります。経験を積んでいくうち、「一人で何でもできてしまうという感覚があったな」と思って。でも、何年も何年もたって、そして今、障害のある子どもたちと一緒に生きるようになって、自分のできることは本当に少ないと気付いたんです。だから、「できること」を与えられることに感謝しています。

 土畠さん 私も小児科医になって2年間ほど、治療に関わったお子さんがみんな良くなって帰っていくので、すごくうれしくて、「自分は何でもできる」と思ってしまったんです。3年目の時、初めて重い障害の残ったお子さんがいて、その時に先輩の先生から「これから、たくさんこういうことがあるよ」と言われ、はっと気付いた。経験の乏しい自分に難しい症状の患者さんを任せていなかったんですね。あたかも自分が治しているかのように勘違いしてしまったんです。

シロアムの園の園舎前に集まった公文和子さん(前列左)とスタッフや子どもたち=2021年3月(公文和子さん提供)
シロアムの園の園舎前に集まった公文和子さん(前列左)とスタッフや子どもたち=2021年3月(公文和子さん提供)

■障害児と関わる

 土畠さん 「友」という言葉を著書で使われています。一緒に働く医療者やボランティアの方に向けられる言葉というイメージがありますが、公文先生は、シロアムの園に通う子どもたちを「友」と表現しています。

 公文さん 子どもたちと「寄り掛かり方」が同じなんですよね。子どもたちが私にすごく寄り掛かってくることもあるし、私が子どもたちに寄り掛かることもある。同じように「寄り掛かり合って生きている」という感覚なんです。「伴走」をしてるというか、一緒に走っている気持ちです。

 土畠さん 障害のある子どもたちに医者として関わる時、どんなことを意識していますか。

■書籍「グッド・モーニング・トゥ・ユー! ケニアで障がいのある子どもたちと生きる」(いのちのことば社)
 【体裁】四六判・195ページ
 【定価】1650円(税込み)
 【販売】札幌の一部書店やインターネット通販で取り扱う予定

書籍「グッド・モーニング・トゥ・ユー!」(いのちのことば社)
書籍「グッド・モーニング・トゥ・ユー!」(いのちのことば社)

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