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<旭川 三浦綾子生誕100年へ 記念文学館の挑戦>上 休館に危機感 寄付2・7倍

 「結婚50周年で文学館へ行くのが願いでした」「再開を待っています」。旭川市の三浦綾子記念文学館に届いた手紙やメールの一節だ。新型コロナウイルスの影響で昨年から3度の休館を余儀なくされた間、全国から寄せられた。その数、100通以上。同館事務局長の難波真実(まさちか)さん(48)は、仕事の合間を見つけては一通一通、返事を書く。

■コロナが直撃

 1922年(大正11年)、旭川市に生まれた小説家三浦綾子は来年が生誕100年。節目に向け記念事業に取り組む同館をコロナが直撃した。来館者の大半は東京や大阪など感染拡大地域から。市民や運営を支える120人以上のボランティアを守るための休館だった。昨年度の開館日数は例年の半分、来館者は7020人と半分以下に減った。

 「氷点」の舞台となった旭川市内の国有の人工林「外国樹種見本林」に文学館を―という2年半にわたる市民運動で、同館は98年6月に開館した。周年事業などへの公的資金を除き、普段の運営は入館料や寄付金で賄う「民設民営」。長期休館は収益の激減を意味する。「存続の危機だと思った」(同館)

 危機感を抱いたのは全国2154人の賛助会員も同じ。賛助会員は市民運動の流れを受け、毎年可能な範囲の寄付で同館を支えている。2020年度は例年同様2千円が最も多いが、休館を知り額を増やした人も。5千円、1万円に交じり、個人で100万円を寄せた人も複数いた。最高は1千万円。20年度の最終的な寄付は、前年度の2・7倍にあたる過去最高の3360万円に上った。

 「綾子さんの作品は魂に響き、人生のつまずきに勇気を与えてくれる。同じ思いを抱く人が応援してくれたのでは。作品を次の世代につなげるため、文学館には輝き続けてほしい」。賛助会員を続ける理由を岐阜県の川口寿美子さん(75)が教えてくれた。難波さんも「ともしびを絶やすな、と言われているようで、胸が熱くなった。三浦文学がどれほど愛されているか改めて感じた」と感謝する。

■目立つ40、50代

 文学館にとってもう一つ収穫だったのは、5万円、10万円といった寄付が、40代、50代から目立ったことだ。三浦文学のファンは60代以上が大半。40代、50代は、まだ若い世代に入る。三浦文学を語り継ぐため、若いファンを増やすことは同館の大きな課題。支援の広がりは、その可能性を感じさせるものだった。

 来館者や既存ファン中心の運営から、三浦文学を知らない人にも積極的に魅力を発信する文学館へ―。コロナ禍の苦境で見えてきたヒントも生かし、文学館の新たな挑戦が始まった。(旭川報道部の佐藤愛未が担当し、3回連載します)

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