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<デジタル発>詩梨ちゃん事件2年 「困ったことない」 行政支援遠ざける特定妊婦

 札幌市中央区で当時2歳の池田詩梨(ことり)ちゃんが衰弱死したとされる事件から6月で2年が過ぎた。「子育てで悩んだことはありません」―。保護責任者遺棄致死罪に問われた母親(23)は昨年10月の裁判員裁判で、こう証言した。未婚の18歳で出産し、札幌市は産前・産後の支援が特に必要な「特定妊婦」と認定していたが、母親と市の関わりは次第に薄れていった。「支援が必要」とされる特定妊婦たちはなぜ、その手から遠ざかるのか。被告と同じ境遇にある母親たちに取材をすると、一様に「困ったことはない」と口をそろえた。(報道センター/水野可菜)

17歳で妊娠した当時の経験を語る女性(手前)=水野可菜撮影=
17歳で妊娠した当時の経験を語る女性(手前)=水野可菜撮影=

<メモ>特定妊婦 10代での出産や予期せぬ妊娠、経済的困窮、精神疾患など、さまざまな事情を抱える妊婦を指す。虐待防止の観点から、2009年施行の改正児童福祉法で明記された。市区町村が認定し、児童相談所などで構成する「要保護児童対策地域協議会」に登録されると、保健師らによる家庭訪問などの支援対象になる。

■面談、拒み続ける

 茶色く染めた髪に、ダメージ加工されたジーンズ。両手の爪は対照的に、マニキュアが塗られず、短く切られていた。「昔から長いネイルは好きじゃないんです」。道央に住む女性(22)は、まだあどけなさの残る表情で語った。

 通信制の高校に通っていた17歳の時、妊娠した。父親は当時交際していた4歳上の男性。予期せぬ妊娠に戸惑いつつ、男性に打ち明けると、「17万なら出すぞ」と言われた。中絶費用を指していた。「人の命って17万円で消せるものなの?」。男性の一言に強い違和感を覚え、「お金はいらない。一人で産む」。自分の中で答えを出した。長男は3歳になり、生活保護を受けながらアパートで2人暮らしをする。

 母子家庭に育った。幼少期から母親は精神疾患に悩み、機嫌が悪いと、いきなり殴られた。仕事から帰る足音で、その日の機嫌が分かるようになった。「暴力は我慢すれば、そのうち収まる。母の機嫌さえ良ければ普通の家庭」と、いつも自分に言い聞かせていた。

 だが、長男が生まれて3人で暮らすようになっても暴力は続いた。「私はいいけど、息子の前ではやめてほしい」との思いを胸に秘め、日々を過ごした。生活費を稼ぐため長男を保育所に預け、日中と深夜の仕事を掛け持ちしていたが、頻繁に高熱を出すなど体を壊した。心身共に疲れ果て、ふと、「息子と一緒に死のう」という考えがよぎった。母親の暴力は我慢の限界に達し、警察に通報すると、息子を連れて家を出た。命を絶つことは踏みとどまった。

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