PR
PR

道内6遺跡、苦節14年 「縄文」世界文化遺産登録へ 1万年の定住過程、高評価

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」の道内初の世界文化遺産登録がほぼ確実な情勢となった。道内6遺跡を含む縄文遺跡群の世界的価値をどうわかりやすく伝えるか―。地元関係者はこの壁に長年ぶつかり続け、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の審査が厳しくなる中、国内審査の段階から推薦書案を何度も練り直した。4道県が登録を目指してから約14年。関係者は知恵を絞り、ついに登録目前に迫った。


 「長い時間がかかった。感無量だ」。遺跡群のうち2遺跡がある函館市の工藤寿樹市長は26日、登録勧告の一報を受けてこう述べ、喜びをあらわにした。

 世界遺産を目指す道のりは苦難の連続だった。4道県は2007年に遺産登録を目指すことで合意し、13年にイコモスに提出する推薦書案を文化庁に提出。だが、文化庁は日本政府の推薦候補とすることを見送り続けた。世界遺産登録が千件を超える中、近年はイコモスの審査が厳しくなっていることが背景にあった。文化庁は全国に約9万の縄文遺跡がある中で「なぜ北海道・北東北限定なのか」と疑問を投げかけ続けた。

 4道県は北海道・北東北ならではの価値を前面に出すため、他地域より遺跡の数が多く保存状態が良いことや、津軽海峡を挟んで同一の文化圏を形成したことなどを追記。遺跡群の価値をより鮮明にするため、景観や保全の観点で不十分だった2遺跡を除外した。

 既に登録されている姫路城や富士山などと比べ、視覚的に価値がわかりづらいという課題もあった。図表を使って17遺跡それぞれが集落の形成や祭祀(さいし)場の出現など、1万年以上にわたる縄文時代の変遷を物語っていることを説明した。点在する遺跡に物語性を持たせ、総体としての意義を強調。7回目の挑戦で国内推薦候補に選ばれた。


 イコモスの審査に移っても手応えはあった。勧告内容を左右する昨年9月の現地調査では「調査員が考古学を専門としており、遺跡の価値を理解してくれた」(道関係者)。実際、イコモスは26日の登録勧告で遺跡群について「定住社会の発展段階を示す」などと評価。鈴木直道知事は「世界遺産にふさわしい優れた価値が国際機関の専門家に認められた」と歓迎した。

 登録されれば来訪者の大幅な増加が想定され、観光振興と遺跡保全との両立が課題となる。キウス周堤墓群を抱える千歳市は勧告に備え、22日から見学できる区域を制限し、中心部に立ち入れないようにした。管理する千歳市埋蔵文化財センターの久保田健司センター長は「大勢が中に入れば、墓群の形が崩れる可能性がある」と懸念する。

 遺産群の価値を正しく伝えるためにはガイドの育成も不可欠だが、縄文文化は幅広い専門知識が必要で一般ガイドよりも多くの勉強量が求められ、育成は簡単ではないのが実情だ。

 遺産保全には住民の協力も欠かせない。函館市教委文化財課の長谷山裕一課長は「地域の人たちが気軽に行ける身近な遺産にし、地域の宝となるよう努めたい」と話す。(佐藤海晟、林篤志、三坂郁夫)

残り:1147文字/全文:2391文字
全文はログインすると読めます。
ログインには、電子版会員かパスポート(無料)の申し込みが必要です。
PR
ページの先頭へ戻る