PR
PR

<北海道 移住者たちの選択 十勝東北部編>「人気者」 小集落の希望

 北海道へ移り住んだ人たちの選択を探るシリーズ<北海道 移住者たちの選択>。十勝東北部編の2回目は、十勝管内本別町の小さな集落に移り住んだ田所洋平さん(30)と優花さん(28)です。来年から、畑作農家として本格的にデビューするのに向け、農家の基本を学んでいます。共に北海道外出身。なぜ、農業を志そうと思ったのか。それぞれの歩みに、きっかけがありました。(文/本別支局 岡田圭史、写真/帯広報道部 北波智史)

畑作農家として独り立ちを目指す田所洋平さん、優花さん夫妻。背後に見えるのは東大雪の山々=2021年4月21日、本別町押帯
畑作農家として独り立ちを目指す田所洋平さん、優花さん夫妻。背後に見えるのは東大雪の山々=2021年4月21日、本別町押帯

■それぞれの「思い」

 十勝管内本別町の中心部から西へ、車で30分ほど。隣の士幌町との境に、その集落はある。押帯(おしょっぷ)地区。この難読地名の由来はアイヌ語で、「川口の川床が箱のように深い」を意味する。

 スーパーや商店はなく、穏やかな田園風景と民家が高台に共存する農村地帯だ。本別町農協などによると、最盛期に30戸以上あった純粋な畑作農家は、高齢化に伴う離農などで今は2戸まで激減。そんな中、首都圏から昨年移住してきた若い夫婦が、100人にも満たない小集落の人気者になっている。

 「機械化が進んでいる十勝農業とはいえ、大事な作業は人の目や判断力が大切なんですね」。4月21日、夫婦はビニールハウス内で青々と育つビートの葉の手入れや水やりを丁寧にこなしていた。田所洋平さん(30)と優花さん(28)。来年、畑作農家として「本格デビュー」する。「親方」と信頼する富川範己さん(68)が見守る中、農作業の基本を身に付ける日々だ。

トラクターを運転する優花さん(右)と、コツをアドバイスする富川範己さん=2021年4月21日、本別町押帯
トラクターを運転する優花さん(右)と、コツをアドバイスする富川範己さん=2021年4月21日、本別町押帯


 農林水産省によると、2019年の新規就農者数は全国で5万5870人(前年比0・1%増)と横ばいだが、次世代を担う「49歳以下」は1万8540人(同3・9%減)と4年連続で減少。高齢の親世代が引退しても、子らの世代が実家を継がず、離農していく―。そんな現実が浮かぶ。

 富川さんもまた、高齢を理由に数年前から離農を決めていた。親族以外の外部に、原則2年間の研修を経て農地や設備を引き継ぐ「第三者継承」制度を、押帯地区で初めて受け入れた。

 過疎が進む中、他の生産者も70代と高齢で、地区から「純粋な畑作農家を途絶えさせたくない」(富川さん)との思いからだった。

 農地25ヘクタール、トラクターなどの農業機械約10台―。「親からもらった土地や機械に思い入れはあるが、これからは若い人たちの時代」。畑作農家としては今年限り。培ってきた営農技術と共に田所夫妻に伝承する。

 小集落が期待を寄せる2人は共に道外出身。洋平さんは兵庫県尼崎市のサラリーマン家庭で、優花さんは長野県川上村のレタス農家で生まれ育った。洋平さんは北大水産学部と同大大学院、優花さんは群馬大工学部を経て、2016年、種苗会社に同期で入社した。

 なぜ、種苗なのか―。それぞれに「農業への思い」があった。そして、洋平さんは畑作農業への夢を膨らませ、優花さんもその思いをくみ、共に歩み始めることになる。

ビートの苗を見ながら語り合う優花さんと洋平さん=2021年4月21日、本別町押帯
ビートの苗を見ながら語り合う優花さんと洋平さん=2021年4月21日、本別町押帯


=十勝東北部編3回目は、5月25日に配信します。

■シリーズ<北海道 移住者たちの選択>
 北海道に移り住んだ人たちが、移住前に何を思い、葛藤し、どんな希望を持って「北海道」を選んだのか、その一端を紙面で紹介しつつ、決断の舞台裏を電子版で詳しくお伝えします。
 ▼専用ページはこちら

残り:4606文字/全文:5946文字
全文はログインすると読めます。
ログインには、電子版会員かパスポート(無料)の申し込みが必要です。
PR
ページの先頭へ戻る