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<北海道 移住者たちの選択>児童教育の夢に異国で挑む 豪州人英語講師

 北海道へ移り住んだ人たちの選択を探るシリーズ<北海道 移住者たちの選択>。十勝東北部編の初回は、十勝管内本別町へ昨年春に移住してきたオーストラリア人の英語講師サマラ・クックさん(28)さんです。子どもたちへの英語教育に力を入れる町の期待を担い、地元の人たちと徐々に打ち解け、交流を広げるサマラさん。一緒に移住した夫のダリル・エーケンヘッドさん(37)も農業に強い関心を示し、2人は新たな本別暮らしの構想を具体化しようとしています。そんな2人の目から、本別町はどんなふうに見えるのでしょうか―。(文/本別支局 岡田圭史、写真/帯広報道部 北波智史)

子どもたちと一緒に昼食をとるサマラ・クックさん=2021年4月21日、本別町の勇足へき地保育所
子どもたちと一緒に昼食をとるサマラ・クックさん=2021年4月21日、本別町の勇足へき地保育所

■縁は「元気くん」のストラップ

 「イングリッシュ、レッツゴー」。4月9日朝、十勝管内本別町の認定こども園「ほんべつ」に、英語の歌声が響き渡った。オーストラリア人の英語講師サマラ・クックさん(28)が「ABC」や「幸せなら手をたたこう」の歌に合わせ、元気いっぱいにダンス。約100人の子どもたちも顔いっぱいに笑みを浮かべ、一緒にアルファベットを復唱する。

 「サマラタイム」。こう呼ばれている。英語を身近に感じてもらおうと、週2回、朝に開かれるこの時間を、子どもたちはもちろん、親たちも楽しみにしている。

 サマラさんは、本別町と姉妹都市のオーストラリア南東部にあるミッチェル郡で生まれた。両親、そして三つ子の弟と妹がいて、6人家族だ。

故郷のミッチェルにいたころ、妹や弟と記念撮影。左から2人目がサマラさん(本人提供)
故郷のミッチェルにいたころ、妹や弟と記念撮影。左から2人目がサマラさん(本人提供)


 本別町との縁の始まりは、高校1年の時。町から派遣された交流団のメンバーとしてやってきた小学生が、町のキャラクター「元気くん」の携帯ストラップをくれた。町特産の豆をかたどったシンプルなデザイン。「とても、うれしかった」。強く記憶に刻まれた。

 本別町の人口は約6500人。ミッチェル郡と同じく、人口の少ない農業地帯と聞いて親近感を抱き、日本の歴史や文化、日本語を学ぶようになる。名門のメルボルン大に進学し、日本の古典や考古学などに接するうち、寺院などにも興味を持つ。持ち前の行動力と海外好きから、これまでに約50カ国を旅した。ハイテク技術と伝統文化の調和した日本に強くひかれていく。

 もともと海外で英語教師になり、児童教育に携わりたい―という夢があった。大学生時代、発達障害の子どもと接する機会があり、幼少期のコミュニケーションの大切さを痛感。同時に、やりがいも強く感じた。

 そんな折、姉妹都市の本別で外国人講師を探していると知る。「これはいい!」と直感し、手を挙げた。

 本別町は子どもたちの英語教育に力を入れている。特に、認定こども園など小学校入学前の子どもに向けた「こども英語チャレンジ」は目玉事業だ。町は派遣会社を通じ、初めて町独自でサマラさんを採用する。町の期待を一身に背負うことになる。

 サマラタイムでは一切、日本語を使わない。動物のイラストなど手作りの英単語カードを手に、分かりやすい英単語で語りかけていく。「音楽や踊りも一緒に楽しみつつ、耳から自然に言葉を覚えてほしいから」

 夫のダリル・エーケンヘッドさん(37)も一緒に移住。今は本別で農業を始めようと密かに構想する。

 移住から1年。2人にとって決して平たんな道のりではなかった。新型コロナウイルスの猛威が立ちはだかり、新婚早々、約8カ月も会えない日々が続いたことも。「寂しくて、寂しくて」。言葉も十分に通じない異国で、独り泣いた。

 だが、根っからの明るさで周囲との距離を次第に埋めていく。

=十勝東北部編2回目は、5月11日に配信します。

■シリーズ<北海道 移住者たちの選択>
 北海道に移り住んだ人たちが、移住前に何を思い、葛藤し、どんな希望を持って「北海道」を選んだのか、その一端を紙面で紹介しつつ、決断の舞台裏を電子版で詳しくお伝えします。
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