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<デジタル発>「SL冬の湿原号」80歳 現役続行へGO (上)運行前の点検

 北海道東部(道東)に広がる釧路湿原。白銀の季節、その真ん中を悠々と走る観光列車「SL冬の湿原号」は、2020年7月、「80歳」を迎えた。北海道の路線で最後の蒸気機関車は「道民の宝」だ。JR北海道は今年2月、現役続行にゴーサインを出した。140年に及び、北海道の鉄道文化をけん引してきたSLは蒸気の力で走り、ベアリング(軸受け)を使わない。現代では「失われた技術の塊」とも言える。この黒い巨体を守り、伝える人々がいる。その現場を訪ね、3回にわたり報告する。(文/厚岸支局 山村晋、写真/釧路報道部 加藤哲朗)

客車5両を連結し、釧路駅のホームに向かうSL冬の湿原号
客車5両を連結し、釧路駅のホームに向かうSL冬の湿原号

■釧路を拠点に

 SL冬の湿原号は、1940年(昭和15年)7月に川崎車両兵庫工場(神戸市)で生まれ、釧路機関区で活躍したSL「C11―171」。全長12・6メートル、重さ66・2トン、610馬力。最高速度は85キロ、旅客も貨物もこなす道内ローカル線の主力機だった。前方の3分の2を蒸気機関(ボイラー)が占める。後方に運転室、石炭庫と水タンク。炭水車を連結する必要がなく、後ろ向きのバック運転も楽々こなせる。


 いまの拠点は、釧路市のJR釧路運輸車両所の仕業庫(車庫)。乗務するのは50代の機関士3人と、30~40代の機関助士6人。全員が、特急列車や普通列車から期間中だけSLに乗り換えて運転する。

■朝は出区点検から

 運行する朝の「出区点検」は、機関士と機関助士が2人1組で行う。

 前日の運行を終え、車庫で静かにたたずむSL。むき出しのボイラーが黒く、美しい。ボイラーは、エンジンの役割を担う。石炭を燃やし、水を沸かしてつくった蒸気が全ての動力源になる。

 運行期間中、火室の火は落とさない。火種をバトンのように次の走行までつなぐ「保火番(ほかばん)」が夜中に見回り、石炭を補う。天井に巨大な換気扇、地面の2本のレールの間には「ピット」と呼ばれる穴があり、その下にある受け皿に灰を落とす。

運行前のC11―171号。頭上に巨大な「換気扇」、足元に「ピット」、その下に灰の受け皿がある
運行前のC11―171号。頭上に巨大な「換気扇」、足元に「ピット」、その下に灰の受け皿がある


 燃える石炭と潤滑油の臭い。そして、機械音と、煙を吐き出す音。車庫内に立ちこめるそんな情景を、釧路運輸車両所の鈴木純矢(じゅんや)副所長(46)は、こんなふうに表現する。

 「運行の朝、煙がもくもくと上がる。石炭の燃える臭いも周辺に漂い、『季節の香り』になっている」

(年齢・肩書は掲載当時)

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※次回は、5月3日に配信します

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