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暮らしと法律

収入減で家賃払えず 「住居確保給付金」もらえる条件は

 新型コロナウイルス禍で、解雇や仕事上の制約から収入減に直面している人が少なくありません。生活の基盤である住居の費用を支払えない窮状も目立っています。札幌弁護士会の西博和弁護士に家賃滞納の現状や住居確保給付金制度の内容について聞きました。(聞き手 佐保田昭宏)

写真はイメージです  Photo by iStock
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■支給期間 最長12カ月まで特例延長

――新型コロナ禍の収入減による家賃滞納の現状を教えてください。

 厚生労働省がまとめた全国のデータによると、住居を失うおそれのある困窮世帯に家賃を期限つきで補助する住居確保給付金の支給件数は2019年度の1年間で3972件でした。しかし、翌20年度は上期だけで11万271件と急増しています。申請も12万2763件に上ります。10万件以上の申請、決定があるところをみると、多くの人が家賃を支払うことが困難な状態に陥っており、かなり深刻だと思います。

――そうした人たちへの支援制度が住居確保給付金ということですか。

 そうです。新型コロナ感染症の影響による休業などで収入が減少し、住居を失うおそれが生じている人も対象になりました。給付金を支給することで安定した住まいの確保を支援する狙いです。札幌市では単身世帯であれば月額3万6千円です。支給期間は原則3カ月で最長9カ月という決まりでしたが、コロナの影響が広がった20年度に新規に申請し受給した人は、特例として最長12カ月まで延長ができます。対象者は、離職・廃業後2年以内または「給与等を得る機会が当該個人の責に帰すべき理由・当該個人の都合によらないで減少し、離職や廃業と同程度の状況にある者」と規定されています。これはコロナの影響を念頭に置いたものです。

――支給要件はどのようなものですか。

 ①収入②資産③求職活動―の三つの要件があります。支給される額は、生活保護で支給される住宅扶助と同様です。コロナの時期から収入が減少している場合、上記三つの要件のいずれにも該当すれば生活就労支援センターなど生活困窮者自立支援法に基づく相談支援を行っている自立相談支援機関の窓口で申請できます。自立相談支援機関は、相談窓口にもなっていますので、自身が支給対象となるかどうかも含めて気軽に相談できます。

■自営業者でも求職活動が必要

――ワンストップで申請までできるというのはよいですね。

 ただ、問題もあります。特に支給要件の三つめの求職活動についてです。例えば自営業の方であっても、住居確保給付金の支給対象にはなりますが「誠実かつ熱心に」求職活動をしなければなりません。これは制度上の問題ですが、一時的な売り上げ減少で、将来の営業再開を念頭に支給を受けたい人などは、求職活動要件を満たせないケースもありえるかと思います。特に、お客さんや売り上げは相当減っているものの、コロナ後を見据えて店舗自体を開けておかなければならない場合もありますし、そもそも就職活動といっても、コロナ後の営業再開を見据えると、就職先も短期のアルバイトなどに限られるでしょうから、コロナ後に事業を再開しようと考えている自営業者にとっては、かなり使いにくい制度だと考えられます。もともと制度が離職者・廃業者を対象につくられており、そこに減収の場合を追加した形のため、不具合が出ています。

――住居確保給付金の申請を断念する自営業者はどうすればいいのですか。

 住居確保給付金以外の制度を利用するしかありません。しかし、全国の多くの自立相談支援機関が、住居確保給付金に関する相談や申請、毎月の提出物管理などに追われ、業務が逼迫(ひっぱく)しており、家計支援等必要な支援が十分に行き届いていないのではないかと懸念されています。そのようなぎりぎりの状態の自立相談支援機関に、住居確保給付金の申請を断念する自営業者をフォローできるだけの余力が残されているのか大変危惧されます。減収の自営業者でも利用しやすくするとともに、自立相談支援機関の負担軽減のためにも、早期の制度改正が必要だと強く感じます。

写真はイメージです  Photo by iStock
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――コロナ禍で、家賃滞納に関する相談を受けたケースはありますか。

 少なくありません。特に住居確保給付金に関連した相談も結構あります。大家さん側からの相談なのですが「借り主が家賃を支払えなくなり、どうしたらいいですか」との相談を受けました。本来ならば5万円の家賃なのに「住居確保給付金分の3万6千円しか入ってこない。足りない分を請求できないか」というような相談です。大家さんからすると、差額分を請求したい気持ちや、今後も家賃を払ってもらえるのかという不安はよく分かります。しかし、住居確保給付金を受ける人は、収入要件からみても、かなり家計的に厳しい状態です。賃料の安い家に転居を検討せざるを得ない可能性もありますし、生活保護を受けないと立ちゆかない人も多くいます。生活保護を受給すると住居確保給付金以上の家賃を払っている場合には転居指導がなされることになり、いずれの場合も大家さんの家賃収入そのものが途絶える可能性があります。大家さんとしては、苦渋の決断にはなるのですが、賃料不払いとして退去を求めるというだけではなく「とりあえず住居確保給付金が入ることで良しとする」のも合理的な選択肢になるのではないかと思いますので、ぜひ検討していただきたいです。

■滞納してもすぐには追い出されない

――家賃を滞納すると、住まいから追い出されるのではないかと心配になります。法的に滞納は猶予されないものなのでしょうか。

 家賃を滞納してもすぐに追い出されるということはありません。仮に1カ月分の家賃を滞納しただけでも賃貸借契約を解除できるという契約条項があったとしても、判例では当該規定自体は有効としつつも「賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみ」「(解除することが)不合理とは認められない事情」がある場合に解除できるとして解除権を制限しています。1カ月の家賃滞納では、大家さんと借り主との信頼関係が破壊されているとは言いがたく、解除できない場合が多いのではないかと考えられます。逆に、滞納が続く場合には賃貸借契約を解除されて、住まいを追い出されるということはあります。先に述べたとおり、賃貸借契約は、大家さんと借り主との信頼関係を基礎としていますから、滞納状態がある程度継続し、大家さんと借り主との信頼関係が破壊されたといえる場合には、解除できるでしょう。

――「信頼関係が破壊された」といえるような滞納状態とは具体的にどれぐらいの期間なのでしょう。

 実際に裁判所で判断されているケースをみても、4カ月の滞納でも信頼関係は破壊されていないとされたり、破壊されているとされたりしているため、期間だけでなく、個別具体的に事情を見て判断しているのだと考えられます。あくまでも目安としてですが、おおむね3カ月程度滞納が続く場合には、解除可能と判断されるおそれがあるのではないかと思います。ただ、家賃を滞納し、大家さんから裁判を起こされても、すぐに追い出されることにはなりません。裁判の中で話し合いの機会が持たれることもありますし、争点があればその分、裁判が長期化していきます。法的にどの程度猶予されるかは個別の事情によりますが、滞納がある程度継続しないと退去を迫られることがないと考えると、次の住まいを検討したり、生活再建の道筋をつけたりする時間は確保できるということになると思います。

――家賃の滞納で賃貸保証会社から一括で返済を求められた場合、どうすればいいですか。

 滞納賃料を一括で請求された場合、保証会社への支払いが必要になります。保証会社から請求を受け、支払わないでいると裁判にかけられてしまい、給与や財産を差し押さえられてしまうことがありますので、早めに弁護士会に相談していただくのが良いと思います。保証会社との訴訟対応はもちろんですが、そのほかの債務についても一緒に相談でき、解決の方向性を見いだすことができます。

――住居確保給付金だけでは足りないというケースも考えられます。

 住居確保給付金だけでは生活が立ちゆかない場合などは、生活保護の受給を検討する必要があります。生活保護制度は、自動車があったり、資産があったりしても受けることができる場合もありますので、まずは、お近くの役所・役場などの窓口で相談してみましょう。もちろん、弁護士会の法律相談センターでも、生活保護に関する相談ができます。

西博和弁護士
西博和弁護士

 <西博和(にし・ひろかず)弁護士>1981年東京都生まれ。2009年に弁護士登録(札幌弁護士会)、15年に西博和法律事務所を設立し、債務整理・離婚・労働事件・交通事故等一般事件をはじめ、奨学金や消費者に関する事件などにも注力している。趣味は鉄道。時刻表の見過ぎで小学3年から近眼が進んだ。特に廃線跡や未成線跡などの遺構や、新幹線などの鉄道工事現場を定期的に見るのが好き。現在はコロナ禍で休日も家にいることが多く、いわゆる「鉄分不足」状態。廃線跡をたどる中で、北海道の歴史にも興味を持ち、現在インターネットなどを通じて情報収集中。

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